ナーディーヤ・ムラード

ナーディーヤ・ムラード・バーシー・ターハーの軌跡

ナーディーヤ・ムラード・バーシー・ターハー（Nadia Murad Basee Taha）は、イラクのヤズィーディー教徒として生まれ、国際的な人権活動家として名を馳せています。彼女は1993年、イラクのスィンジャール近くの村、コジョに生まれました。彼女の使命感は、2014年にISIL（イラクとレヴァントのイスラム国）によるヤズィーディー教徒の大虐殺を経験することで一層強まったと言えるでしょう。

2014年8月15日、ナーディーヤは故郷の村でISILに捕らえられ、多くの女性や子どもたちと共にバスでモースルへ運ばれました。この恐ろしい出来事の最中、彼女は兄弟たちを失い、猥褻な虐待と人身取引の犠牲となりました。ムラードは、この過酷な状況を「怪物」と表現する男性に暴行され、さらには結婚を強要される苦しみを味わったのです。

彼女が拉致された後、ある家族の助けにより、3ヶ月後に逃亡することができました。その家族はムラードをクルド人支配地域へ導くために身分証を提供し、彼女はイラク領クルディスタンの難民キャンプに辿り着きました。そこで、ヤズィーディー教徒を支援する団体と連絡を取り、ドイツに避難していた姉と再会することができたのです。

2015年2月、ムラードはバシマという仮名で初めて媒体に自らの体験を語り始め、これにより彼女の告白は国際的な注目を集めました。特に、著名な弁護士アマル・クルーニーが彼女の支援者となり、ムラードは彼女によって保護されました。2015年12月には、ISILによるヤズィーディー教徒への組織的なテロ行為とジェノサイドを国連安保理会議で告発し、介入を求めました。

2016年9月16日には国連親善大使として就任し、人身取引の被害者の尊厳のために立ち上がりました。彼女は、同年の10月にラミヤー・ハッジー・バシャールと共にサハロフ賞を受賞し、受賞演説ではジェノサイドを二度と繰り返さないことの重要性を強調しました。

2018年には、彼女の活動と体験を描いたドキュメンタリー『On Her Shoulders』（邦題『ナディアの誓い - On Her Shoulders』）が公開されました。そして、同年にはノーベル平和賞も受賞しました。

受賞歴

ムラードは多くの賞を受賞しています。2016年にはヴァーツラフ・ハヴェル人権賞を受賞し、サハロフ賞も同年に獲得しました。さらに、2018年のノーベル平和賞受賞により彼女の活動が国際的に認識され、支持を広げる結果となりました。

自著

彼女は著書『THE LAST GIRL - イスラム国に囚われ、闘い続ける女性の物語』を出版し、彼女の苦難と希望の物語を語っています。

ナーディーヤ・ムラードは、今やシリアやイラクを中心とした地域の人々のために声を上げ、活動を続ける象徴的な存在となっています。

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