ニキフォロス2世ドゥカス・オルシーニ

ニキフォロス2世ドゥカス・オルシーニ：激動のイピロスを生きた最後の君主

ニキフォロス2世ドゥカス・オルシーニ（1329年 - 1359年）は、イピロス専制公国君主であり、名目上のケファロニア宮廷伯でもありました。彼はギリシアとイタリアの血を引き、複雑な時代を生きた人物です。

生涯

生い立ちと即位

ジョヴァンニ2世オルシーニの息子として生まれたニキフォロス2世は、母アンナによって父が毒殺された後、幼くしてイピロス専制公となります。しかし、この事件は東ローマ帝国の介入を招き、ニキフォロスは一時亡命を余儀なくされます。

東ローマ宮廷での生活

亡命後、ニキフォロスは東ローマ帝国の宮廷に連行され、ヨアニス6世カンタクゼノスの娘マリアと結婚します。彼はカンタクゼノス家の一員として、帝位を巡る内乱の中で義父を支援しました。

イピロス専制公への復帰と苦難

ヨアニス6世が廃位され、セルビア王ドゥシャンが死去すると、ニキフォロスはイピロスへ帰還し、専制公の地位を取り戻します。しかし、ペストの流行やセルビアの支配によって住民構成が変化し、アルバニア人の流入が増加していました。ニキフォロスはセルビア人との提携を試みますが、ギリシア人やアルバニア人の反発を招き、立場を危うくします。

死とイピロスの分裂

アルバニア人の討伐に乗り出したニキフォロスは、アヘロオス河畔の戦いで敗北し、戦死します。彼の死後、イピロス専制公領は瓦解し、分裂の時代を迎えることになります。

人物像と評価

ニキフォロス2世は、ドゥカス・コムニノス・アンゲロス家に連なる最後の君主であり、イピロスとセサリアを一人で統治した最後の君主でした。彼は激動の時代に翻弄され、領土の回復と安定に尽力しましたが、時代の変化に対応できず、悲劇的な最期を遂げました。彼の死は、イピロス地方史における大きな転換点となりました。

ニキフォロスの後、イピロスはアルバニア人に自治を認め、緩やかな宗主権による統合を目指したシメオン・ウロシュの支配下に入ります。しかし、イピロスとセサリアは事実上分裂し、一つの国家として統合されるのはオスマン帝国時代まで待たなければなりませんでした。

ニキフォロス2世の短い統治は、イピロスの歴史における重要な時期であり、彼の死は、その後のイピロスの運命を大きく左右することになったと言えるでしょう。

もう一度検索