ニコマコス

ゲラサのニコマコスについて

ニコマコス（Nicomachus）は、紀元前60年頃から120年頃に活躍した古代の数学者で、シリア属州のゲラサ（現在のヨルダンのジャラシュ）で生まれました。彼は新ピタゴラス派に属し、数字に神秘的な性質があると考えていたことで知られています。彼の著作には「算術入門（Introduction to Arithmetic）」や「音楽の手引き（Manual of Harmonics）」があり、特に音楽と算術の関係を探求したことで名を残しています。

ニコマコスの生涯

ニコマコスの生活については、その出身地やピタゴラス学派に関係していること以外は多くのことが知られていません。彼は主に2世紀頃に活動しており、その時期に書かれた「音楽の手引き」には、トラシュロスについての言及があります。また、彼の著作「算術入門」は、2世紀中頃にアプレイウスによってラテン語に翻訳されたとされており、これは彼の影響力を示しています。このように、ニコマコスは尊敬される地位の学者であったことが示されています。

彼は幅広い学問に興味を持ち、より高度な研究を行いたかったようですが、旅行の多さから時間を取るのが難しかったとも記しています。これにより、彼の学問的追求がどれほど真剣であったかがうかがえます。

主な著作

算術入門（Introduction to Arithmetic）

この著作は、新ピタゴラス派の思考を反映したもので、数字に対する神秘的な見解が強調されています。ニコマコスは、「神の数」と呼ばれる概念的な無形の数と、現実の物質を測定する「科学的な数」を区別しました。彼は、特に素数や完全数に関する詳細な考察を書き、算術が音楽や幾何学、天文学などよりも優先的な存在であると主張しました。この著作は、ボエティウスの「De institutione arithmetica」に大きな影響を与えており、彼の理論は後世の数学に対しても深い影響を及ぼしました。

音楽の手引き（Manuale Harmonicum）

ニコマコスの「音楽の手引き」は、アリストクセノスやエウクレイデス以来の最初の重要な音楽理論書とされています。ここでは、音程が数の比に基づいているというピタゴラスの思想を展開し、音楽と宇宙の調和について深く掘り下げました。特に、音楽の聴取における耳と声の関係に関する議論は、当時の音楽理論に独自の見解を呈したものです。また、彼は具体的な楽器についても言及し、当時の音楽文化についての貴重な情報を提供しています。

失われた著作

ニコマコスは多くの著作を残しましたが、一部は失われています。以下はその一部です。

• - 「算術学の技術（Art of Arithmetic）」：算術に関する広範な作品で、フォティオス1世に言及されています。
• - 「幾何学入門（Introduction to Geometry）」：彼の名前に関連して引用されていますが、真偽は不明です。
• - 「算術の神学（Theology of Arithmetic）」：ピタゴラスの数の神秘的特性についての著作で、二巻から成ります。
• - 「ピタゴラスの生涯（Life of Pythagoras）」：テュロスのポルピュリオスやイアンブリコスに引用されたピタゴラスの伝記。

これらの失われた著作は、ニコマコスの学問的影響を今に伝える貴重な資料となっています。彼の思想は、また後世の哲学や数学に多大な影響を与え、今日でもその重要性は色あせることがありません。

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