ニコメディア

ニコメディア：古代都市の盛衰

ニコメディア（現イズミット）は、紀元前712/711年にメガラ人によって建設された古代都市であり、当初はアスタコスと呼ばれていました。後にビテュニア王ニコメデス1世によって再建され、ニコメディアと改名されました。ローマ帝国時代にはビテュニア属州の首都として、東の重要な拠点となりました。

ローマ帝国の首都として

286年、ディオクレティアヌス帝はニコメディアをローマ帝国東部の首都と定め、テトラルキア（四帝統治）体制下でその地位を維持しました。しかし、324年にコンスタンティヌス1世がリキニウスを破り、330年にコンスタンティノープル（現イスタンブル）を新たな首都としたことで、ニコメディアの首都としての役割は終わりを迎えました。しかし、その後も重要な都市として存続しました。

大迫害の中心地

ニコメディアは、ディオクレティアヌス帝によるキリスト教徒の大迫害の中心地となりました。303年、ディオクレティアヌス帝はニコメディアの教会を破壊し、聖書を焼き払い、キリスト教徒に対する勅令を発布しました。この迫害は帝国全土に広がり、多くのキリスト教徒が犠牲となりました。

後期ローマ帝国とビザンツ帝国時代

324年、コンスタンティヌス1世がクリュソポリスの戦いで勝利した後も、ニコメディアは重要な都市であり続けました。コンスタンティヌス1世はニコメディア近郊で亡くなり、コンスタンティノープルがビザンツ帝国の首都としての地位を確立した後も、ニコメディアはアジアへの交通の要衝として重要性を持っていました。しかし、358年の大地震と火災によって都市は大きな被害を受け、再建されました。ユスティニアヌス1世の時代には公共建築物が建設され、拡張されました。また、軍事拠点として、イスラム勢力に対する防衛の役割も担いました。

中世のニコメディア

451年、ニコメディアの主教座はコンスタンティノープル総主教庁管轄下の府主教座に昇格しました。8世紀には、コンスタンティノス5世がペストから逃れるために一時的にニコメディアに宮廷を置きました。11世紀にはセルジューク朝に対する軍事拠点となり、十字軍もこの地を通過しました。1204年のコンスタンティノープル陥落後、一時ラテン帝国の支配下に入りましたが、ニカイア帝国によって奪還されました。1302年のバフェウスの戦い以降、オスマン帝国の脅威に晒され、1337年にオスマン帝国の支配下に入りました。

都市インフラと遺構

ローマ帝国時代、ニコメディアは水道橋、劇場、列柱道路、フォルムなどの公共施設を備えたコスモポリタンな都市でした。ディオクレティアヌス帝は首都としてニコメディアを再建し、宮殿、兵器廠、造幣局、造船所などを建設しました。現代のイズミットの地下にはニコメディアの遺構が埋まっており、1999年の地震後には貴重な彫像が発見されました。現在、ディオクレティアヌスの宮殿跡などの発掘調査が行われています。

ニコメディアは、ディオクレティアヌス、アッリアノス、聖ゲオルギオスなど、多くの著名な人物を輩出しました。その歴史は、ローマ帝国、ビザンツ帝国、オスマン帝国の興亡と深く関わっており、現代においても重要な歴史的遺産として注目されています。

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