ニコラス・ポッペ

ニコラス・ポッペの生涯と業績

ニコラス・ポッペ（1897年6月27日 - 1991年8月8日）は、ロシア出身の言語学者であり、主にモンゴル語に関する研究で知られています。彼は アルタイ諸語の専門家として多くの業績を残し、様々な言語や文化に多大な影響を与えました。ポッペの名前は、ドイツ語の「ニコラウス」に由来し、ロシアでは普通に「ニコライ」とも呼ばれることがあります。

教育と初期の経歴

ポッペは清国の山東省にある煙台市で生まれ、父親はロシア帝国の領事館で働いていました。彼はサンクトペテルブルク大学で中国語や満州語、モンゴル語を勉強し、東アジアについての知識を深めていきます。母親も多国語を話す昆虫学者であり、家庭環境は彼の知的好奇心を育てるものでした。

しかし、彼の少年時代には数々の歴史的事件が影を落としました。1900年の義和団の乱やその後の戦争の経験は、ポッペに深いトラウマを与えたと言われています。また、父親がハルビンで泥棒に殺害された悲劇的な出来事も彼の人生に影響を与えました。

学業の途上でフィン・ウゴル語族に興味を持つようになったポッペは、母国の歴史的変革によって学びの道が変わることになります。ロシア革命の影響で帝国軍に徴兵された彼は、後にフィンランドでの留学を希望しましたが、国家の状況により実現しませんでした。代わりに、アルタイ語族の研究に進むことになります。

専門家としての成長と研究

ポッペはモンゴル語の研究を行う中で多くの著名な言語学者の指導を受けます。1919年にはペトログラードの地理学研究所で助手として働き、様々な民族の調査に携わりました。1920年には現代東洋語専門大学で講師に就任し、着実に専門家としての地位を確立していきます。

1921年にはペトログラード大学で修士号を取得し、以降、カルムイクの調査やモンゴル各地での調査を行いました。彼の研究は多岐にわたり、ブリヤートモンゴルやダグール語などの言語文献を調査し、それぞれの地域の文化や言語の変遷を記録しました。

この時期に、多くの著作を通じてモンゴル語やアルタイ諸語についての知識を提供しました。ポッペは特に、1938年にアラビア語やペルシア語、チャガタイ語、モンゴル語の辞書をロシア語版として出版し、貴重な資料としました。

戦争と移住

1936年の大粛清において、ポッペは同時期に友人であった日本語学者ニコライ・ネフスキーの粛清を目撃し、言語学界の厳しい時代を過ごしました。戦争が進む中、彼はドイツに逃れ、ベルリンの研究所で働きました。

1949年には亡命し、アメリカに移住。シアトルのワシントン大学で教壇に立ち、多くの学生に教育を施しました。ポッペは、言語学分野での貴重な研究成果を持ち続け、その後も数多くの言語学者と交流を深めました。

最後の年

彼の人生は、言語学だけでなく、民族学的研究や文化の理解を深めることにささげられました。ポッペは1988年にシアトル大学から退任し、その後も言語学の重要人物として位置づけられ続けました。1991年、94歳で他界しました。彼の業績は今なお言語学の分野で高く評価されており、後の研究者たちに影響を与え続けています。

まとめ

ニコラス・ポッペは、モンゴル語およびアルタイ諸語の研究において多くの貴重な業績を残し、言語学の発展に寄与した人物です。その多彩な経歴と献身的な研究は、現代の言語学者にとっても重要な指針となっています。

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