ニシノライデン

ニシノライデンは、日本の競走馬史に名を刻む名馬にして、数々のドラマチックな出来事を経験した個性的な競走馬でした。中央競馬の重賞競走(GII)を4勝という輝かしい成績を残した一方、「斜行癖」という大きな課題を抱え、幾度となく競走生活に影を落としました。その結果、計6回もの失格処分を受け、「降着制度の産みの親」や「斜行馬」という異名で呼ばれることになったのです。

4歳（数え年）の1984年2月、京都競馬場でデビューを飾ったニシノライデンは、初戦を勝利で飾ると、その後も安定した走りを見せ、5戦3勝という好成績でクラシック路線へと進みました。しかし、当時最強馬として君臨していたシンボリルドルフを始めとしたライバルたちの壁は高く、皐月賞では6着、日本ダービーでは5着と、惜しくも勝利を掴むことができませんでした。

その後、秋に挑んだ京都新聞杯では重賞初制覇を果たすと、続く菊花賞ではシンボリルドルフを相手に2番人気に支持されました。レースでは、果敢にシンボリルドルフに挑戦するも、3着という結果に終わりました。このレースでのニシノライデンの勇猛果敢なレースぶりは、実況を務めた杉本清氏によって後年、高く評価されています。

5歳になってからは、鳴尾記念（当時GII）で重賞2勝目を挙げ、勢いに乗るも、天皇賞・春ではシンボリルドルフの4着に終わりました。秋初戦の朝日チャレンジカップでは1着でゴールインするも、斜行により失格の判定を受けました。この失格により、騎乗していた伊藤清章騎手は騎乗停止処分を受けました。

その後も、ニシノライデンは重賞競走で活躍を続けました。阪神大賞典で重賞3勝目を挙げ、有馬記念ではシンボリルドルフ、ミホシンザンに次ぐ3着と健闘しました。しかし6歳初戦の日経新春杯で故障し、約1年2ヶ月の休養を余儀なくされました。

7歳で復帰したニシノライデンは、再び重賞競走に挑みます。サンケイ大阪杯を制覇し、迎えた天皇賞・春では、圧倒的1番人気だったミホシンザンに次ぐ2番人気に支持されました。しかし、レース終盤で再び斜行。アサヒエンペラーの進路を妨害し、ゴール直前ではアサヒエンペラーと順位が入れ替わるほどの大きな斜行となりました。審議の結果、ニシノライデンは失格処分となり、日本中央競馬会史上初めて、GI級レースで2着に入線しながら失格となった馬となりました。

続く宝塚記念ではGIレース初となる1番人気に支持されるも、3着に敗れ、このレースを最後に現役を引退しました。

引退後は、種牡馬として西山牧場で活躍しました。しかし、産駒の気性面に課題があり、活躍馬は現れませんでした。1997年以降は産駒が生まれなくなり、ニシノライデンの血を受け継ぐ馬は残ることなく、2011年12月31日、老衰による心臓麻痺で生涯を終えました。

ニシノライデンは、その圧倒的な能力と、幾度となく繰り返された斜行という問題を抱えながらも、多くのファンを魅了し、競馬史に大きな足跡を残した競走馬でした。その生涯は、才能と葛藤、そして競走馬としての栄光と苦悩の物語として、今も語り継がれています。また、ニシノライデンの天皇賞での失格は、日本の競馬界における降着制度の導入に大きな影響を与えたとされています。母系は西山牧場ではなく大東牧場由来で、6代母は1941年の阪神優駿牝馬の優勝馬である英月（競走名テツバンザイ）という血統背景も、その競走成績と合わせて興味深い点です。

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