ニチレイアセロラドリンク

ニチレイアセロラドリンク：捕鯨から生まれたロングセラー飲料

ニチレイアセロラドリンクは、南米原産のアセロラを主原料とする清涼飲料水です。現在では、ニチレイが原料供給を行い、サントリー食品インターナショナルがブランドオーナーとして製造、同社子会社のサントリーフーズが販売しています。この人気商品は、ニチレイの意外な転換期から生まれた物語を持っています。

ニチレイはかつてブラジルで盛んに捕鯨事業を展開していました。しかし、1982年の国際捕鯨委員会による商業捕鯨モラトリアムにより、事業継続が困難に。そこでニチレイは新たな事業の柱として、1984年にアセロラを使った商品開発に着手、1986年にはアセロラドリンクを発売しました。当初はアセロラヨーグルトやアセロラのど飴といった派生商品も展開されていましたが、現在は清涼飲料水が中心となっています。

2005年、ニチレイが持株会社制に移行すると、アセロラドリンクシリーズの製造販売はニチレイフーズに。さらに2008年には、原料調達をニチレイフーズの完全子会社であるニチレイスーコが担うようになりました。2009年には、「アセロラちゃん」というマスコットキャラクターも登場し、ブランドイメージの強化を図りました。

しかし、アセロラ関連事業以外の飲料事業を展開していなかったニチレイは、経営資源の有効活用という観点から、アセロラ飲料事業の譲渡を決定。2009年、ニチレイフーズとサントリー食品インターナショナル（当時サントリー食品）との間で、業務用製品を除くアセロラ飲料事業の譲渡契約が締結されました。

2010年5月、サントリー食品への事業移管と同時に商品の大幅なリニューアルが行われました。サントリーの飲料技術とニチレイの冷凍技術が融合し、品質向上と積極的なマーケティングが相乗効果を生み出しました。リニューアル後約3ヶ月で年間販売目標300万ケースを突破、最終的には前年比約2.5倍となる600万ケースを販売する大ヒット商品となりました。

サントリー傘下入り後も、ニチレイブランドでの販売が継続され、サントリーのコーポレートロゴは使用されていません。これは事実上のライセンス契約と言えるでしょう。原料供給はニチレイスーコが継続し、チルド製品については雪印メグミルク（旧日本ミルクコミュニティ）が販売を担っています。

その後もニチレイアセロラドリンクは、消費者のニーズに対応するため、ラインナップの拡充と製品改良を繰り返しています。炭酸飲料の追加、ホットドリンクの発売、栄養機能食品としての表示の追加など、時代の変化に合わせた商品開発が行われてきました。2016年には、ニチレイスーコがニチレイフーズに吸収合併され、アセロラ配合サプリメントも発売されています。2019年には、国産海塩を加えた新製品も登場しました。

現在、サントリーフーズが「ニチレイアセロラドリンク」シリーズのほとんどを販売し、200ml紙パックのみが雪印メグミルクを通じて販売されています。全製品の果汁含有量は10%未満です。長年に渡り愛されてきたニチレイアセロラドリンクは、ニチレイとサントリーの技術とマーケティング戦略が融合した、まさに成功事例と言えるでしょう。

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