ニック・ドゥトワ

ニック・ドゥトワ：武器商人、傭兵、そして告発者

ニック・ドゥトワは、南アフリカ出身の元武器商人、傭兵、そして軍人です。2004年の赤道ギニア・クーデター未遂事件への関与と、その後のプラヤ・ネグラ刑務所における過酷な体験の証言で、その名を知られるようになりました。

軍人から傭兵へ

ドゥトワは南アフリカ国防軍のエリート部隊である第32大隊および第5偵察コマンド（Recce）に所属し、軍人としてのキャリアをスタートさせました。1985年には、14名の犠牲者を出したハボローネ襲撃作戦にも参加。最終的には大佐にまで昇進しています。

退役後、ドゥトワは民間軍事会社「エグゼクティブ・アウトカムズ」に傭兵として雇われ、リベリア、アンゴラ、シエラレオネといった紛争地帯で活動しました。同時に、武器取引やダイヤモンド取引を行う会社を設立するなど、起業家としての顔も持っていました。

2002年、第二次リベリア内戦中に、イギリスのドキュメンタリー作家ジェームス・ブラバゾンのボディーガードを務めたことがきっかけで、ブラバゾンと親交を深め、自身の過去について語るようになります。この時の経験と、後のクーデター未遂事件を基に、ブラバゾンは2010年に回顧録「My Friend the Mercenary: A Memoir」を出版しました。

クーデター未遂事件とプラヤ・ネグラ刑務所

2004年、ドゥトワは元エグゼクティブ・アウトカムズのメンバーであったサイモン・マンが主導する赤道ギニアでのクーデター計画に参加。武器調達を担当しましたが、計画は事前に露見し、逮捕されました。裁判では死刑を求刑されましたが、南アフリカ政府の圧力や、ドゥトワが主犯ではなく実行犯に過ぎないことなどが考慮され、禁固34年の判決が下されました。

裁判の過程で、逮捕後の拷問や弁護士との接見妨害といった人権侵害が明らかになりました。自供とされる証言も、拷問によって得られたものであったとされています。

ドゥトワはその後5年間、悪名高いプラヤ・ネグラ刑務所に収監され、拷問、暴行、不十分な食糧供給、医療の欠如、監禁といった虐待を受けました。これらの過酷な実態を告発した彼の証言は、サイモン・マンの赤道ギニアへの移送を拒否する根拠となり、釈放直前の移送においても、マンは拘束を受けることなく自由に振る舞うことができたとされています。

現在

2009年11月3日、ドゥトワは特赦により釈放されましたが、この釈放はサイモン・マンを通じた買収によるものだと推測されています。

現在は傭兵稼業から引退し、イエメンで自動車販売業に従事した後、南アフリカに帰国しています。

関連項目

エグゼクティブ・アウトカムズ
サイモン・マン
赤道ギニアクーデター未遂事件 (2004年)
マーク・サッチャー
ジェームス・ブラバゾン

出典

My Friend the Mercenary: A Memoir by James Brabazon

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