ニック・リーソン

ニック・リーソンとは

ニック・リーソン（Nick Leeson）は、イギリス出身の元銀行員で、ベアリングス銀行を破綻させたトレーダーとして知られています。1967年2月25日生まれ。彼は、その大胆な取引と不正行為によって、金融業界に大きな衝撃を与えました。

生い立ちとキャリア

リーソンは、1967年にイギリスのワトフォードで生まれました。18歳で学校を中退後、銀行業界に入り、事務員としてキャリアをスタートさせました。クーツ・アンド・カンパニー、モルガン・スタンレー銀行を経て、1989年にベアリングス銀行に入行します。

入行後、インドネシアのジャカルタ支店での債権処理を任されたことがきっかけで、彼は出世コースを歩み始めます。その後、シンガポール国際金融取引所（SIMEX）におけるベアリングズの先物取引部門の責任者に抜擢され、アジア市場で頭角を現しました。

巨額損失と不正行為

シンガポール赴任後、リーソンは日経平均と日本国債のデリバティブ取引で多大な利益を上げ、ベアリングス銀行の収益に大きく貢献しました。しかし、その裏で、彼は部下の注文ミスなどを隠蔽するために架空取引口座（Error Account）88888番を開設し、自己売買を繰り返していました。これは内規で禁じられた行為であり、結果として損失を拡大させることになりました。

1995年1月17日、阪神・淡路大震災が発生し、日本市場が暴落した際、リーソンは一日で5,000万ポンドもの損失を出しました。損失を取り戻そうと更なる賭けに出たものの、相場は回復せず、架空取引口座の損失は加速度的に膨れ上がりました。2月24日、リーソンは辞表を提出し、シンガポールから逃亡しました。

逮捕と裁判、そしてその後

事件が発覚した時点で、リーソンの損失は約8.6億ポンド（約1,380億円）に達し、当時のベアリングス銀行の自己資本金を上回る巨額なものでした。ベアリングズ銀行は再建を断念し、破綻しました。

リーソンは、逃亡先のフランクフルトで逮捕され、シンガポールに送還されました。その後、懲役6年半の実刑判決を受け、1999年に出所しました。

出所後、彼は自身の経験を綴った手記「私がベアリングス銀行をつぶした」を出版し、後に映画化もされました。

その後、リーソンはアイルランド西部のゴールウェイ県に移り住み、ゴールウェイ・ユナイテッドFCのコマーシャル・マネージャーやCEOを務めました。現在は、自身の資金で株式投資を行っているとされています。

事件が与えた影響

ニック・リーソンの事件は、金融業界におけるリスク管理の重要性を再認識させる出来事となりました。彼の不正行為と巨額損失は、金融機関の内部統制の甘さを露呈させ、その後の金融規制の強化につながりました。また、彼の経験は、金融市場の複雑さとリスクを理解する上で、貴重な教訓となっています。

参考資料

ニック・リーソン[著],戸田浩之[訳]『私がベアリングス銀行をつぶした』（新潮社、1997年）ISBN 9784105346010
Stephen Fay[著],宇佐美洋[訳]『ベアリングズ崩壊の真実』（時事通信社、1997年）ISBN 9784788797031
山崎裕『デリバティブの謎―ディーリング現場からの分析 ベアリングズ社はなぜ倒産したのか!? 』（メロン出版、1995年）ISBN 9784894368002

関連項目

ベアリングス銀行
マネー・トレーダー 銀行崩壊
井口俊英

外部リンク

* Nick Leeson's Official Website

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