ニッケルクロム鋼

ニッケルクロム鋼とは

ニッケルクロム鋼は、炭素鋼にニッケル（1.0 - 3.5%）とクロム（0.2 - 1.0%）を添加した合金鋼の一種です。この鋼材は、耐食性と耐摩耗性に優れており、構造用合金鋼の中でも初期に開発されました。特に、砲身の材料として発展した歴史を持ちます。

特性

ニッケルを加えることで材料の粘り強さが向上し、クロムによって焼入れ性が高まります。通常、焼入れと焼戻しの熱処理を施して使用されます。炭素鋼と比較して、引っ張り強度、靭性、焼入れ性に優れており、焼戻し時の軟化抵抗も向上しています。しかし、焼戻し脆性という欠点があり、焼戻しの際に脆くなる傾向があります。この問題を避けるためには、焼戻し時に徐冷ではなく急冷することが推奨されます。ただし、後述するように二段階の焼戻しを行うことで、この特性は大きく改善されます。

また、ニッケルは高価な戦略物資であるため、ニッケルクロム鋼は合金鋼の中でも比較的高価です。同様の長所を持つ、より安価なクロムモリブデン鋼で代替されることも多いです。ニッケルクロムモリブデン鋼やクロムモリブデン鋼が発達する以前の第二次世界大戦までは、合金鋼の主流でした。クランク軸、ピストンピン、歯車などに使用されています。

Cr-Ni系ステンレス鋼もニッケルやクロムを添加した合金鋼ですが、ステンレス鋼はこれらの元素をより多く含んでいます。

ニセコ鋼

ニッケルクロム鋼は、その機械的特性から重工業や軍事産業で多用されてきました。しかし、ニッケルクロム鋼の熱処理においては、金属組織の不均一による様々な欠陥が避けられませんでした。偶然にも、魚雷の気室破裂事故の原因調査の過程で発見された構造相転移の応用により、ニッケルクロム鋼の焼戻しを二段階で行うと（二段焼戻し）、ソルバイト（微細パーライト）地の緻密な組織が得られ、機械的特性、特に硬度と靭性が大幅に向上することが分かりました。

1924年、この技術を発見・研究した日本製鋼所室蘭製作所は、「日本製鋼所のニッケルクロム鋼」という意味を込めて、この鋼材を「ニセコ鋼」(NISECO steel)と名付けました。ニセコ鋼は、戦車の防弾装甲板や船舶の駆動軸などに広く使用されました。日本初の鋼鉄防弾装甲板を装備した八九式中戦車をはじめ、日本陸海軍の標準装甲板、また二重焼戻しを採用したニッケルクロム鋼は、世界各国の艦船舶の駆動軸などにも採用されました。しかし、浸炭技術の普及とともに、より安価なクロムモリブデン鋼がニッケルクロム鋼の代替として使用されるようになり、ニセコ鋼は次第にその役割を終えました。

JISによる分類

[ニッケル]]クロム鋼材は、[[日本産業規格]において「SNC」という記号で識別されます。

この記号に続く数字によって、鋼材の成分や特性が分類されます。例えばSNC23は、ニッケルとクロムの含有量が異なる別の種類のニッケルクロム鋼を示します。



注意点:

この表に記載されていない合金元素は、鋼を仕上げる目的以外に意図的に添加してはなりません。

関連項目

• - ニッケル鋼
• - クロム鋼
• - ニッケルクロムモリブデン鋼
• - ニクロム (ニッケルとクロムの合金で、鉄は含まない)

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