パーライト

パーライト：鋼鉄の真珠光沢組織

パーライトは、鋼鉄の微細組織を構成する主要な組織相の一つです。その名の通り、真珠に似た光沢を持つ層状構造が顕微鏡下で観察されます。この特徴的な組織は、鉄と炭素の合金である鋼鉄が特定の条件下で冷却される際に形成されます。

パーライトの形成

パーライトは、炭素含有量約0.77質量％の鋼鉄（共析鋼）が727℃以下の温度までゆっくり冷却される際に、オーステナイトから共析反応によって生成されます。この反応において、オーステナイトは、非常に薄い板状のフェライトとセメンタイトという二つの異なる組織に変化します。これらのフェライトとセメンタイトは交互に層状に配列し、特徴的な層状組織を形成します。この層の厚さは冷却速度に依存し、冷却速度が速いほど層は薄くなります。極めて急速に冷却された場合は、マルテンサイトや残留オーステナイトが生成されます。

名称の由来と歴史

パーライトという名称は、その真珠のような光沢に由来します。イギリスの顕微鏡学者ヘンリー・ソービーによって名付けられました。金属組織学の分野では、共析晶とも呼ばれています。また、日本の冶金学者本多光太郎は、パーライトの組織を波打ち際の砂模様に見立て、「波来土」という漢字を当て字として用いましたが、現在ではあまり使用されていません。

炭素量とパーライト組織

鋼鉄の炭素含有量によって、パーライト組織を含む鋼鉄の性質は大きく変化します。炭素含有量が0.77質量％の共析鋼では、組織はすべてパーライトで構成されます。しかし、炭素含有量がこれよりも少ない亜共析鋼では、パーライトに加えてフェライトが、炭素含有量がこれよりも多い過共析鋼では、パーライトに加えてセメンタイトが初析組織として存在します。

亜共析鋼と過共析鋼

亜共析鋼（hypoeutectoid steel）は、炭素含有量が0.77質量％未満の鋼鉄です。初析フェライトとパーライトが混在する組織を持ちます。炭素含有量が少ないものは機械構造用炭素[[鋼]]として、炭素含有量が多いものは工具[[鋼]]として利用されます。フェライトは比較的柔らかく延性が高い一方、パーライトはフェライトより硬く、強度に寄与します。そのため、炭素量によって機械的性質が変化します。

過共析鋼（hypereutectoid steel）は、炭素含有量が0.77質量％を超える鋼鉄です。初析セメンタイトとパーライトが混在する組織を持ちます。セメンタイトは非常に硬い組織であるため、過共析鋼は主に工具[[鋼]]として利用され、高い耐摩耗性や硬度が求められる用途に適しています。しかし、脆性も高いため、用途に応じて適切な熱処理が必要です。

まとめ

パーライトは、鋼鉄の重要な組織相であり、その微細組織は鋼鉄の機械的性質を大きく左右します。炭素含有量や冷却速度を制御することで、目的とする特性を持つ鋼鉄を製造することが可能です。パーライトの理解は、様々な鋼鉄材料の開発と利用において不可欠です。

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