ニッサン島

パプアニューギニア独立国のブーゲンビル州に属するニッサン島は、太平洋南西部に広がるグリーン諸島において最大の面積を持つ島です。この島は別名「グリーン島」としても広く知られています。地理的には、ニューブリテン島の主要都市ラバウルから東へ約200キロメートルの距離に位置し、またブーゲンビル島北西からも同じく約200キロメートル離れた洋上に浮かんでいます。ニッサン島は単独の島ではなく、シロッコ島やバラハン島といった他の島々と共に一つの環礁を形成する一部をなしています。

このニッサン島は、特に第二次世界大戦のソロモン諸島の戦いにおいて、その戦略的な位置から歴史に名を刻みました。連合軍は、当時日本軍の強固な拠点となっていたラバウルを封じ込め、前線から孤立させることを目的として、その周辺地域の制圧を進めました。その戦略の一環として、1944年2月15日、ニュージーランド第3師団を中心とする連合軍部隊がニッサン島への上陸作戦を決行しました。この戦闘は「グリーン諸島の戦い」として知られています。

連合軍による占領後、ニッサン島は直ちに軍事拠点としての整備が始められました。特に迅速に進められたのが、航空作戦の要となる滑走路の建設です。二本の滑走路が急速に設けられ、島は連合軍の航空部隊の重要な出撃拠点となりました。さらに、近隣の別の島には魚雷艇（PTボート）の基地も開設され、海上からの哨戒や輸送路の確保にも活用されました。これらの基地が稼働していた時期には、最大で17,000人もの連合軍兵力が島に滞在していたと記録されており、その軍事的規模の大きさを物語っています。

大規模な軍事基地の建設と運用は、島の先住民にも大きな影響を与えました。多くの先住民は、連合軍の都合により一時的ながらも島を離れることを余儀なくされ、約7ヶ月から9ヶ月の間、遠く離れたガダルカナル島への疎開を強いられました。彼らが故郷の島に戻ることができたのは、戦局がある程度落ち着いてからのことでした。

興味深いエピソードとしては、このニッサン島の補給基地で勤務していた人物の中に、後にアメリカ合衆国大統領となるリチャード・ニクソンがいたことが挙げられます。彼のニッサン島での体験は、戦後の政治活動にも影響を与えたとされ、当時の島民の間でも彼の存在は記憶されていると言われています。

しかし、太平洋戦争の戦局がさらに進行し、連合軍の主戦場がフィリピンや日本本土へと移っていくにつれて、ニッサン島の軍事的な重要性は次第に低下していきました。前線が北上するにつれて、この島を拠点とする必要性は失われ、かつての賑わいは姿を消していきました。現在のニッサン島は、かつての戦いの痕跡を残しつつも、平穏な時間を過ごしています。その歴史は、太平洋戦争における戦略的な要衝としての役割と、それに翻弄された人々の存在を今に伝えています。

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