ニッパー (犬)

ニッパー（Nipper）についての概要

ニッパーは、絵画『His Master's Voice』の犬のモデルで、彼の姿は多くの企業のトレードマークとして知られています。この絵画は、日本ビクター（現在のJVCケンウッド）、HMV、RCA（現在はフランスのヴァンティヴァ）のブランドアイコンとなり、広く認知されています。

生い立ちと性格

ニッパーは1884年にイギリス・ブリストルで誕生しました。最初の飼い主は風景画家のマーク・ヘンリー・バロウドで、彼はニッパーが客の脚を噛むことが多かったため、「Nipper」と名付けました。この名前は、英語で「噛む」という意味を持つ「nip」が由来です。犬種はフォックス・テリア系ですが、少しブル・テリアの血も混じっていました。

彼は絵画の印象とは異なり、明るく活発でやんちゃな性格を持つ犬でした。ニッパーは、相手から襲われた際には果敢に立ち向かい、いつも勝利を収めていたとのことです。マークの死後、弟の画家フランシス・バロウドが彼を引き取ります。フランシスは、亡き兄の声が聞こえる蓄音機を見つめるニッパーの姿を絵に描くことにしました。

ニッパーは1895年に亡くなり、テムズ川近くの桑の木の下に埋葬されたと言われています。1950年にその場所が調査されましたが、ニッパーの遺骨は発見されませんでした。

商標としての経緯

ニッパーの死後、フランシス・バロウドは1898年に蓄音機に耳を傾けるニッパーの絵を描き、それを「Dog Looking At and Listening to a Phonograph」として商標出願しました。しかし、エジソン・ベル社は「犬はフォノグラフを聴かない」とその企画を却下しました。

その後、フランシスはベルリーナ・グラモフォン社にアプローチし、グラモフォンのデザインを取り入れることを提案され、1899年に修正した絵が商標として登録されました。1900年6月に、グラモフォンの商標として「His Master's Voice」が正式に使用されることになりました。

現在の商標と影響

現代のHMVは、かつてグラモフォンの小売ブランドだったため、「His Master's Voice」の略称である「HMV」が店名に使用されています。現在のHMVはEMIとの関係はありませんが、ブランド名は引き続き使用されています。

日本では、ビクターが『ビクターローン・システム』の一部として「ニッパーLプラン」を提供し、ラジオ番組『S盤アワー』のオープニングにはニッパーに関連したフレーズが使われていました。また、ニッパーのイラストは各社にて異なり、特にビクターエンタテインメントの関連会社フライングドッグは跳躍するシルエットを使っています。

文化的な影響

ニッパーに関するカラフルな絵本や音楽も存在します。例えば、ビクター名犬物語にはニッパーの物語が描かれています。また、1952年にはニッパーに関連した童謡が日本ビクターからリリースされており、『歌うニッパー』というタイトルでシンギング・ドッグス名義のレコードも販売されました。

このように、ニッパーは20世紀以降も音楽文化や商業の中で重要な役割を果たし続けています。彼の存在は、単なるキャラクター以上の意味を持ち、音楽の世界で人々に愛されています。

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