ニトクリス

ニトクリス - エジプト第6王朝最後の女ファラオ

ニトクリス（またはニティクレティ）は、エジプトの第6王朝において名を馳せた女性ファラオです。彼女の名前はギリシャ語や英語においても様々に表記されていますが、その存在に関しては多くの議論が交わされています。特に、古代の歴史家であるヘロドトスやマネトの著作に見られるニトクリスの記述は、彼女が男性のファラオの空位を埋める女王であるとされているものです。もし彼女が実際に存在したのなら、メルエンラー2世の妹であり、ペピ2世の妻であるネイトの娘に位置づけられます。

ドイツのエジプト学者ルートヴィ・シュテルンは、1883年に『アビュドス王名表』に登場するネチェルカラー王とニトクリスが同一人物であると主張しました。これを受けて、デンマークのエジプト学者キム・ライホルトはシュテルンの仮説を検証し、異なる王名表の記録を分析しました。彼の研究によれば、『トリノ王名表』において「ニトケルティ・シプタハ」がエジプト第7王朝時代に挙げられていることが判明し、この名前が第6王朝の後期に関与している可能性を示しました。また、ライホルトは「ニトクリス」という名は、「ネチェルカラー」または「ニトケルティ（優れたネイト）」に由来すると指摘しています。

来歴と逸話

ヘロドトスの著作第2巻において、祭司たちの言葉を借りて彼女の存在を確認することができます。エジプトの王が330人の中で18人がエチオピア出身で、1人のみが土着の女性であったと伝えられています。その土着の女性がニトクリスで、彼女は王位に就いていた兄弟を暗殺されたことを受けて復讐を企てます。彼女は巨大な地下室を建設し、復讐の宴を開いて兄弟の仇を招待しました。その宴のさなか、彼女は秘密裡に水を放流し、敵を水死させたとされています。復讐を終えたニトクリスは、報復を恐れて火の充満する部屋に自ら身を投じたと言われています。この逸話は、ペルシアにおいて自らを罰するために火の中に投げ込まれる刑罰に由来していると欣求されています。

マネトの断片集『アイギュプティカ』によれば、ニトクリスは美貌と勇敢さを兼ね備え、同時代の女性の中で最も高貴な存在として描かれています。彼女は金髪で色白、赤い頬を持ち、在位期間は12年とされ、メンカウラー王のピラミッドとして知られる第三のピラミッドを建設したとされています。

ニトクリスに関する文化的影響

ニトクリスはさまざまな作品でもモチーフとなっています。例えば、小説『ファラオとともに幽閉されて』では彼女が登場人物の一人として描かれ、クトゥルフ神話などでも「ニトクリスの鏡」という架空の物品が登場します。また、TRPG「クトゥルフの呼び声」や人気ゲーム「Fate/Grand Order|Fate_Grand Order」にも彼女を模したキャラクターが登場し、古代エジプトへの興味を掻き立てています。

このように、ニトクリスは伝説的な存在として多くの人々に語り継がれているとともに、文献や現代のメディアにおいても影響を与え続ける重要なファラオであると言えるでしょう。

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