ニトログリセリン

ニトログリセリン

ニトログリセリン（英: nitroglycerin）は、有機化合物であり、主に爆薬としての用途と狭心症治療薬としての利用が知られています。この化合物は、グリセリンの3つのヒドロキシ基が硝酸と反応し、エステル化することで生成されます。厳密には、ニトログリセリンは硝酸エステルに分類されるものであり、日本では一般的にニトログリセリン及びその含有薬剤を指すことが多いです。

ニトログリセリンは無色で甘苦い油状の液体であり、水にはほとんど溶けず、有機溶剤には溶解します。特有の性質として、非常に小さな衝撃でも爆発を引き起こす可能性があるため、取り扱いには高い注意が必要です。製造や取り扱いにおいては、過去に多くの爆発事故が発生しており、これは主に技術の未熟さや取り扱いミスが原因でした。現在では適切な方法が確立されているため、正しく扱えば危険は軽減されます。

歴史

ニトログリセリンは1846年、イタリアの化学者アスカニオ・ソブレロによって初めて合成されました。彼は自身の舌でその新物質の味を確かめた際に、血管が拡張し、こめかみがずきずきと痛む経験をしたとされています。これはニトログリセリンの強い生理作用によるものであり、爆薬としての用途は早々に危険視されました。その後、アルフレッド・ノーベルによる安全な取り扱い方法の開発により、ニトログリセリンは実用化されました。

第一次世界大戦中には、ニトログリセリンの原料であるグリセリンが大量に必要とされ、その生産方法が各国で探求されました。特にドイツとアメリカでは、発酵過程でのグリセリンの生成が成功し、大量生産が可能となりました。

製造方法

ニトログリセリンの製造には、グリセリンを硝酸と硫酸の混合した酸でエステル化するという過程が用いられます。この方法では、化学的な反応を経てニトログリセリンが得られます。

爆発性

ニトログリセリンは爆発感度が高く、低速爆轟（低速での爆発現象）を引き起こすことが知られています。特に、8 ℃で凍結し、14 ℃で融解しますが、凍結時の感度が高くなるため、取り扱いには注意が必要です。膠化（粘土状にすること）することによって危険が軽減されますが、凍結や解凍を繰り返すと液体のニトロが漏れ出し、爆発の危険が増します。保管時には温度管理が不可欠であり、間接的に加熱する方法が推奨されています。

用途

医薬品

ニトログリセリンの主な医薬品としての利用は、狭心症の治療における血管拡張作用です。アルフレッド・ノーベル自身がこの薬を晩年に使用していたという逸話があるように、長い歴史を持っています。ニトログリセリンが体内で分解されると一酸化窒素（NO）が生じ、それが血管を拡張させるメカニズムが理解されています。

このため、現代の医薬品には硝酸イソソルビドなどの硝酸系薬品が使用されていますが、経口投与では効果が得られません。経皮や舌下投与が必要となり、半減期も短いため、投与方法には注意が必要です。ニトログリセリンの医薬品も爆薬と同じように扱われており、適切な添加剤によってその危険性は低減されていますが、爆薬の製造も理論上は可能です。

爆薬・火薬

ニトログリセリンはその爆発特性から、ダイナマイトの原料として利用されました。最初に開発されたダイナマイトは、ニトログリセリンを珪藻土にしみこませたものでしたが、後にはニトロセルロースとの混合物が開発され、今日の製品に至ります。堅牢な用途に適応した形で、さまざまな火薬に組み込まれています。

法規制

日本では、ニトログリセリンは消防法の第5類危険物に分類されており、厳重な取り扱いが義務付けられています。また、アメリカでは医薬品としての利用にも関わらず、爆薬として扱われ、輸出には制限があります。

物語における登場

ニトログリセリンの性質は多くの物語に取り上げられています。たとえば、映画『恐怖の報酬』では、ニトログリセリンを運ぶ男たちの緊迫した状況が描かれており、リメイク版も製作されています。さらに、漫画「Dr.STONE」にも登場し、さまざまな場面でその危険性と利用価値が強調されています。

その他の情報

ニトログリセリンに関する誤解も存在します。特に、結晶化についてのデマや、亜酸化窒素との混同などが挙げられます。これらはそれぞれ異なる性質を持つ化合物であり、注意が必要です。彼の特性を理解することが、取り扱いや利用方法の鍵となります。

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