ニュージーランドの国章

ニュージーランド国章：歴史と象徴

ニュージーランドの国章は、1956年に制定されました。この国章は、単なる紋章ではなく、ニュージーランドの歴史、文化、そして国民性を象徴する複雑で意味深いデザインです。 盾を中央に据え、その両脇には白人女性とマオリ男性がサポーターとして立ち、上部には聖エドワード王冠が輝きます。一見複雑に見えるこのデザインには、それぞれの要素が深く関わっています。

国章を構成する要素

盾： 赤と青の四分割された盾は、左右に白い縦帯で分けられています。この二分割は、ニュージーランドの北島と南島を表し、白い縦帯はそれらを隔てるクック海峡を象徴しています。海峡には三隻のガレー船が描かれ、海上交易の歴史を示唆しています。

左上（青）： 南十字星の四つの星が描かれ、ニュージーランドの国旗にも用いられている重要なシンボルです。
右上（赤）： 黄色の羊の毛皮は、ニュージーランドの重要な産業である畜産業を表しています。
左下（赤）： 黄色の麦の束は、農業のシンボルです。
右下（青）： 交差したハンマーは、工業を表しています。

サポーター： 盾の左側には、ニュージーランドの国旗を抱えた白人女性が立っています。彼女は入植者の子孫と女性の象徴とされます。一方、右側には、タイアハ（マオリの槍状の棒）を持つマオリ男性が立ち、先住民マオリと男性を代表しています。この二人は、ニュージーランドの多様な民族構成を象徴しています。

聖エドワード王冠： 盾の上部には、イギリス王室の戴冠式に使われる聖エドワード王冠が描かれています。これは、イギリス君主との国家元首としての繋がりを示しています。

ギンシダ： 盾の下部には、マオリの人々の間で聖なる植物とされていたギンシダが描かれています。これは、マオリ文化と伝統への敬意を表しています。

リボン： 盾の下部には、「ニュージーランド」の国名が書かれています。

旧国章との比較

1911年に制定された旧国章と比較すると、いくつかの違いが見られます。旧国章では、聖エドワード王冠の代わりにイギリス国旗を掲げるライオンの上半身が描かれており、イギリスとの繋がりをより強く強調していました。また、サポーターである白人女性とマオリ男性は正面を向いていましたが、現行の国章では互いに向き合っています。さらに、盾の下部にあるリボンには「ONWARD（前へ）」という標語が書かれていましたが、現行の国章では国名が書かれています。これらの違いは、ニュージーランドの国家意識の変化を反映していると言えるでしょう。旧国章では盾の下部の装飾が黄金の蔦でしたが、現行の国章ではギンシダが使用されています。また、白人女性の髪の色や衣装も、旧国章と比較して変化が見られます。

まとめ

ニュージーランド国章は、一見シンプルなデザインの中に、豊かな歴史と文化が凝縮されています。盾のシンボル、サポーターの人物、そして王冠やギンシダといった要素は、それぞれがニュージーランドのアイデンティティを象徴し、その複雑な歴史と多様な文化を表現しています。旧国章との比較を通して、ニュージーランドの国家意識の変化と、その発展の歴史を垣間見ることができます。

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