聖エドワード王冠

聖エドワード王冠について

聖エドワード王冠（St. Edward's Crown）は、イギリス王室において重要な祭具であり、特に戴冠式での役割を担っています。この王冠は、イングランドの王室の伝統から派生し、現在ではイギリスそして英連邦王国の戴冠式で使用される正式な王冠として知られています。王冠のデザインやその使用は、統治者の権威を象徴するものであり、各国の紋章や記章、その他多くの印でも見られます。

現在の聖エドワード王冠

現存する聖エドワード王冠は、1661年にチャールズ2世の戴冠式のために制作されたもので、エリザベス1世から引き継がれた真珠も含まれています。主に22金で作られたこの王冠は、4つのクロスパティーと4つのフルール・ド・リスを交互に配置したデザインが特徴です。また、内側には白貂の毛皮で縁取られたベルベット帽があり、上部には十字架を形成する2本のアーチがあります。王冠には444個もの貴重な宝石がはめ込まれていますが、かつては戴冠式のたびに宝石が賃借され、後にフレームだけになってしまうこともありました。1911年以降、宝石は恒久的に装着されるようになりました。

ちなみに、ヴィクトリア女王やエドワード7世は、王冠の重さが理由で、別の軽い大英帝国王冠を使用したとされています。約2kgの重さを持つ聖エドワード王冠は、実際の戴冠式では非常に重く感じられることから、双方はその代替を選びました。

エドワード懺悔王のオリジナルの王冠

聖エドワード王冠の名は、1065年にエドワード懺悔王が使用した王冠に由来します。そのオリジナルには、アルフレッド大王の王冠の一部が使われた可能性があり、王位の正当性を示すために1066年のクリスマスにウィリアム1世の戴冠式でも使用されています。このように、王冠は歴代の王たちの重要な儀式において使用され続けてきました。具体的には、ウィリアム2世やヘンリー1世など、数多くの王がこの王冠を戴冠式で使用しました。

ただし、1216年のヘンリー3世最初の戴冠式では、聖エドワード王冠ではなく花で編まれた冠が使われました。歴史家の中には、ジョン王によって失われた王室祭具の中にオリジナルの聖エドワード王冠も含まれていたとの見解を持つ者もいますが、他の研究者は、オリジナルは1642年まで失われることなく保管されていたと主張しています。

王冠はイングランド内戦の際にオリバー・クロムウェルによって破壊されましたが、1661年にチャールズ2世の戴冠式のために新たに作り直されました。これにより、聖エドワード王冠は再び王権の象徴としての地位を得ることになります。

王冠の図版としての使用

実際の聖エドワード王冠はイギリス国王の財産として存在していますが、その図版表現は英連邦王国全体で利用されています。具体的には、各国の紋章、軍や警察の記章、政府や王室に関連した団体のロゴなどで広く採用されています。1953年にはエリザベス2世の指示により、以前はチューダー朝の王冠が用いられていましたが、聖エドワード王冠の図版が使われるようになりました。なお、このような図版使用のためには国王自身の許可が必要です。

このように、聖エドワード王冠は長い歴史と伝統を持ち、英連邦における王権の象徴としての重要な役割を果たす存在です。

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