ニューヨーク52番街

『ニューヨーク52番街』は、ビリー・ジョエルが1978年に発表したアルバムであり、彼のキャリアの中でも特に重要な作品として知られています。1982年には世界初の商業用CDとして発売され、音楽史においても特筆される出来事となりました。このアルバムは、第22回グラミー賞で最優秀アルバム賞と男性ポップ・ボーカル部門の2部門を受賞し、その音楽的な評価の高さを示しました。

制作の背景と音楽性

アルバムのタイトルは、レコーディングが行われたマンハッタン52丁目のA&Rスタジオに由来します。ビリー・ジョエルは、本作でジャズ/フュージョン系のゲスト・ミュージシャンを多数起用し、新たな音楽的試みに挑戦しました。「ザンジバル」では、フレディ・ハバードがトランペット・ソロを披露し、楽曲に深みを与えています。また、「マイ・ライフ」では、シカゴのピーター・セテラとドニー・デイカスがゲスト参加し、コーラスで彩りを添えました。

ヒット曲とアルバムの成功

『ニューヨーク52番街』は、ビリー・ジョエルにとって初の全米アルバム・チャート1位を獲得した作品であり、1979年の年間LPチャートでも1位に輝きました。アルバムからは、「マイ・ライフ」（全米3位）、「ビッグ・ショット」（全米14位）、「オネスティ」（全米24位）といった数々のシングル・ヒットが生まれました。特に「オネスティ」は日本での人気が高く、多くのアーティストによってカバーされています。

楽曲の背景

「ビッグ・ショット」は、二日酔いの男を主人公にしたユーモラスな歌です。「ザンジバル」は、ビリー・ジョエルのスポーツ観戦の嗜好を反映した楽曲であり、「スティレット」は、当時の恋人エリザベス・ウェーバーとの関係性を描いています。「ロザリンダの瞳」は、ニューヨークのスパニッシュ・タウンを舞台にしたラテン音楽の要素を取り入れた楽曲であり、「自由への半マイル」は、ニューヨークのイタリア人街を舞台にした歌です。「アンティル・ザ・ナイト」は、ライチャス・ブラザーズやフィル・スペクターからの影響を受けた壮大なバラードであり、アルバムのクライマックスを飾ります。そして、表題曲「ニューヨーク52番街」へと続き、アルバムは幕を閉じます。

40周年記念盤

2018年には、アルバム発売40周年を記念して、「ニューヨーク52番街 40周年記念デラックス・エディション」が発売されました。アナログ盤とCDがリリースされ、CDには、テッド・ジェンセンによるリマスターやフィル・ラモーンのプロデュースによる5.1chサラウンドが収録されています。特典として、『ニューヨーク52番街』ツアーでの武道館初公演チケットやツアー・パンフレットの復刻版も封入され、ファンにとっては貴重なアイテムとなっています。

カバーアート

アルバムジャケットは、マンハッタン52丁目にあるスタジオ前の歩道で撮影されました。トランペットを持って壁に寄り掛かるビリーの姿は、リラックスした雰囲気で、アルバムの音楽性を象徴しています。ビリーが手にしているトランペットは、フレディ・ハバードから借りたものではなく、フィル・ラモーンが用意したコーン・コンステレーションだったというエピソードも、長年にわたって語り継がれています。

『ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイム・ベストアルバム500』において354位にランクインするなど、音楽史における評価も確立しています。『ニューヨーク52番街』は、ビリー・ジョエルの音楽的な才能と革新性が結実した、時代を超えて愛される名盤です。

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