ニュー・グラス

アルバート・アイラーの『ニュー・グラス』は、1969年に発表されたスタジオ・アルバムです。この作品は、彼の音楽キャリアの中でも特に異色であり、ファンク、ソウル、ロックといった要素を大胆に取り入れたことで、当時賛否両論を巻き起こしました。

それまでのアイラーの音楽性とは異なり、本作ではエレクトリックベースやホーン・セクションが導入され、より大衆的な音楽への接近が試みられています。エレクトリックベースは、過去にアイラーのグループでアップライトベースを演奏していたビル・フォルウェルが担当しました。また、アイラーの妻であるメアリー・パークスと、R&B系のシンガーソングライターであるローズ・マリー・マッコイがボーカルとして参加していることも、本作の特徴の一つです。

収録曲の中でも特に注目されるのは、「ニュー・ゴースツ」です。この曲は、アイラーの代表曲である「ゴースツ」を改作したものであり、よりファンキーでソウルフルなアレンジが施されています。

音楽評論家のアル・キャンベルは、オールミュージックにおいて本作に5点満点中3.5点を付け、「恐らくアイラー最大の問題作で、世界のファンからも批評家からも誤解されている、もっと言えば嫌われている」と評しています。しかし、彼は同時に「アイラーは決して、R&Bや土臭いブルースの素人ではなく、1950年代にシカゴのブルースマン、リトル・ウォルターのバックでキャリアをスタートさせた」とも指摘し、アイラーの音楽的なルーツと新たな試みを理解する重要性を説いています。

『ニュー・グラス』は、発表当時こそ評価が分かれましたが、今日ではアイラーの音楽的な探求心を示す重要な作品として再評価されています。彼の音楽の新たな一面を発見できるこのアルバムは、多くの音楽ファンにとって興味深い作品と言えるでしょう。

収録曲
1. メッセージ・フロム・アルバート〜ニュー・グラス
2. ニュー・ジェネレーション
3. サン・ウォッチャー
4. ニュー・ゴースツ
5. ハート・ラヴ
6. エヴリバディズ・ムーヴィン
7. フリー・アット・ラスト

参加ミュージシャン
アルバート・アイラー – テナー・サクソフォーン、ボーカル、口笛
ザ・ソウル・シンガーズ（ローズ・マリー・マッコイ、メアリー・パークス） - ボーカル
セルダン・パウエル - テナー・サクソフォーン
バディ・ルーカス - バリトン・サクソフォーン
バート・コリンズ、ジョー・ニューマン - トランペット
ガーネット・ブラウン - トロンボーン
カール・コブス - エレクトリック・ハープシコード
ビル・フォルウェル - エレクトリックベース
* バーナード・パーディ - ドラムス

このアルバムは、Discogsで詳細な発売一覧を確認できます。

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