ニース包囲戦 (1705年-1706年)

ニース包囲戦：スペイン継承戦争におけるフランス軍の攻防

ニース包囲戦は、スペイン継承戦争中の1705年3月15日から1706年1月4日にかけて行われた、フランス軍によるニース攻略戦です。この戦いは、当時のヨーロッパの勢力図を大きく塗り替える要因の一つとなりました。

戦いの背景

18世紀初頭、ヨーロッパはスペイン王位をめぐる争い、すなわちスペイン継承戦争の渦中にありました。フランスは、自国の影響力を拡大するため、サヴォイア公国領であったニースを標的に定めました。

包囲戦の経過

フランス軍はヴァル川に集結し、ニース侵攻の準備を進めました。しかし、ニースを守るサヴォイア軍は、フランス軍の動きを予測できず、十分な防衛準備を怠っていました。具体的には、1704年末には火薬の備蓄をピエモンテに移送してしまい、結果的にニースの防衛力は大きく低下しました。

1705年春、ラ・フイヤード公爵率いるフランス軍は、ニースの要塞を包囲しました。ニースの要塞は、岩の多い山の支脈に位置し、周囲2.3キロメートル、高さ8メートルの壁で守られていました。壁の内側には、さらに高く大きな壁があり、壁面には監視用の櫓が設けられていました。そして、最も内側には、要塞の中核となる稜堡が配置されていました。この堅固な要塞を攻略するため、フランス軍は万全の準備を期して包囲戦に臨みました。

フランス軍は、ポー川沿岸の平原に拠点を置き、ニースへの圧力を強めました。一時的に6ヶ月間の停戦が合意されたものの、その間にピエモンテへの援軍が派遣されるなど、戦況は常に流動的でした。包囲戦を勝利に導くため、フランス軍はベリック公爵を新たな指揮官として派遣しました。ベリック公爵は、大砲と臼砲計113門を投入し、54日間にわたる激しい砲撃をニース城に浴びせました。この砲撃により、ニース城は廃墟と化しました。

ニース城の破壊

ニース城は、ルイ14世の命令により徹底的に破壊されました。ルイ14世は、ニース城を「まるで存在しなかったように」完全に破壊することを指示し、フランス軍はこれを実行しました。この破壊工作は、単なる軍事的な勝利を示すだけでなく、フランスの権威を誇示する意味合いも持っていました。

包囲戦の影響

ニース包囲戦は、スペイン継承戦争におけるフランスの勝利を象徴する出来事の一つとなりました。しかし、ニースの街と要塞は壊滅的な被害を受け、その復興には長い年月を要しました。また、この戦いは、ヨーロッパの各国の勢力均衡に大きな影響を与え、その後の国際関係にも深い爪痕を残しました。

もう一度検索