臼砲

臼砲とは

臼砲（きゅうほう）は、大砲の一種であり、曲射砲に分類されます。英語では「Mortar」と呼ばれ、元々は「臼」や「乳鉢」を指す言葉ですが、その形状が臼に似ていることからこの名が付けられました。中世の時代から近代にかけて、攻城用の兵器として城や要塞に対する攻撃に広く使われました。

臼砲の構造

臼砲は、短くて肉厚な砲身を持ち、大口径の砲弾を低い初速で発射します。弾道が高く、命中精度は他の火砲と比べて低いものの、主に大型の目標を攻撃するため、あまり問題視されませんでした。中世には石や金属の球体が砲弾として使用されましたが、近代では榴弾やコンクリート貫通弾などが主流となりました。

臼砲と迫撃砲

興味深いことに、英語圏では臼砲と迫撃砲の区別が明確ではありませんでした。現在では火砲の種類として「mortar」と言うと、通常は現代の迫撃砲を指します。臼砲は定義上、砲身長が20口径以内で、約45度の角度で弾丸を発射する兵器とされています。しかし、この基準では中世の火砲全てが臼砲として扱われてしまいます。特にナポレオン戦争の時代まで、砲身が5口径以下の物が通常でした。日本陸軍では、臼砲、迫撃砲、曲射歩兵砲という三つに分類されていました。

歴史的背景

臼砲は14世紀後半に初めて姿を現しました。この頃、石弾を発射する射石砲として使用され、敵の城郭を攻撃する兵器としての役割を果たしました。16世紀には、導火線式の榴弾の利用が始まり、臼砲の形が進化を遂げることになります。日本では、江戸時代中期にオランダからの技術を取り入れた臼砲の必要性が認識され、これが幕府により製造されることとなりました。

ナポレオン戦争と臼砲

ナポレオン戦争の最中、臼砲は軽量で高機動性を持ちながらも、射程や砲撃精度に乏しいという特徴を持ちました。しかし、当時の他の火器の射程が短かったため、その短所はあまり問題とされませんでした。特に榴弾が実用化されたことで、臼砲は効率的な対人兵器として重宝されました。この時期、馬による牽引力が重要であり、大型の火砲を運用するためには相当な数の馬が必要でした。

クリミア戦争とその後

クリミア戦争では、イギリスが巨大なサイズのマレット臼砲を製作しました。これは世界最大の臼砲の一つであり、後に多くの国においてこのデザインが引き継がれました。その後、南北戦争や戊辰戦争では、各種の臼砲がその特性を活かして戦闘で使用されました。

臼砲の進化と影響

明治時代、特に日露戦争では、当時の日本の冶金技術を駆使して数多くの臼砲が製造されました。これらは日本陸軍の火力の一端を担い、実戦において威力を発揮しました。その後、第一次世界大戦を経て、臼砲はさらに近代化され、砲尾装填式が主流となっていきました。しかし、20世紀に入り、飛躍的に発展した冶金技術によって、射程が長く機動力に優れた榴弾砲が登場し、臼砲の存在意義は薄れていったのです。

現代の臼砲

現在では、臼砲は実戦で使われることがほとんどなくなりました。しかし、特定の場面においては依然としてその形状や特性を生かした兵器が存在し続けています。自走臼砲のような進化型や特殊任務用の大型火砲としての役割も見られますが、全体としては非常に限られた用途に留まっています。

結論

このように、臼砲はその歴史を通じて進化し、多くの戦争で重要な役割を果たしてきました。現代の火砲の基礎とも言えるものであり、その技術的発展や運用法は軍事史において欠かせないテーマの一つです。

もう一度検索