ニーチェの馬

『ニーチェの馬』

概要

『ニーチェの馬』（ハンガリー語: A torinói ló、英語: The Turin Horse）は、2011年に制作されたハンガリー映画であり、監督はタル・ベーラです。本作は、哲学者ニーチェが1889年1月3日にトリノの広場で、鞭打たれた馬に出会って涙した逸話からインスピレーションを受けています。ただし、映画自体にはニーチェは登場せず、彼の持つニヒリズムの思想が色濃く反映された親子の生活が描かれています。タル・ベーラは本作を自身の最後の監督作品と明言しています。

受賞歴

本作は、第61回ベルリン国際映画祭において銀熊賞（審査員グランプリ）および国際批評家連盟賞（コンペティション部門）を受賞しました。また、2012年にはキネマ旬報ベスト・テンにおいて外国映画部門で第1位に選出されています。

ストーリー

物語は、1889年のある日から始まります。ニーチェはトリノの広場で、傷ついた馬が鞭で打たれているのを目にし、衝動的に駆け寄り、馬の首を抱いて涙を流しました。この出来事が彼の精神的な崩壊のきっかけとなり、以降の10年間を静かに過ごすことになったとのことですが、馬のその後は誰も知らないままとなります。

物語が展開するのは、この馬の飼い主である農夫とその娘の日常です。彼らの生活は、果てしない困難に直面しながらも続いていきますが、その様子は非常に厳しく、静かな悲劇を孕んでいます。

一日目

農夫は馬車に乗り込み、青ざめた風の中、のどかな田舎の家へと戻ります。娘が優しく迎え入れ、農夫は馬と車を小屋にしまいます。彼女は父の服を替えさせ、一緒になって一つの茹でたジャガイモを食べます。食事を終え、寝床に入る際、農夫は59年間鳴き続けていた木食い虫の音が途絶えたことに気づきます。外では暴風が荒れ狂っています。

二日目

娘が水を汲みに井戸に向かいます。その後、酒を飲んだ農夫は馬車を動かそうと試みますが、馬は一向に動かず、失意の中で家に戻ります。彼は薪を割り、娘は洗濯に励みますが、再び訪れた男がパーリンカを分けて欲しいと頼みます。その男は町が風で壊滅的だと語り続けますが、農夫はその話に興味を示すことなく、男が去るのを見送ります。

三日目

娘が水を汲みに行くと、農夫は馬小屋の掃除をします。新たな飼い葉を与えますが、馬は食べようとしません。そこへ、馬車に乗った流れ者たちが現れ、不法に井戸の水を使い始めます。二人は彼らを追い払い、流れ者たちの罵声を耳にします。その後、娘は一人の流れ者から渡された本に目を通します。この本は教会の悪徳について書かれており、未だ風は静まることはありません。

四日目

娘が井戸に水を汲みに行くと、井戸は干上がってしまいます。馬は相変わらず食事を拒み、農夫はこの場所を離れる決意をします。しかし彼らが道を進むと、ついに自ら引いていた馬車が止まり、再び家へと戻ります。娘は静かに外を眺めます。

五日目

娘は朝、農夫を起こし、着替えさせます。食卓に着くも、二人はジャガイモを食べることができず、食べ残しが目立ちます。その夜、ランプに火が点かなくなり、絶望が二人を包みます。外の嵐はようやく去り、静寂の中で無言の時間が流れます。

六日目

食卓に並んだジャガイモを見つめる農夫は、生のジャガイモを口にしますが、すぐに諦めてしまいます。二人の間には重苦しい沈黙が続き、日常の苦しさが彼らの生活に限界をもたらします。

キャスト

• - ボーク・エリカ：娘役
• - デルジ・ヤーノシュ：馬の飼い主・父役

外部リンク

• - 公式ウェブサイト（日本語）
• - ニーチェの馬 - allcinema
• - ニーチェの馬 - KINENOTE
• - A torinói ló - オールムービー（英語）
• - A torinói ló - IMDb（英語）
• - The Thinking Image: Fred Kelemen on Béla Tarr and The Turin Horse, an interview by Robert Koehler for Cinema Scope

もう一度検索