ヌトンビ (スワジランド王妃)

ヌトンビ・トワラ（Ntfombi Tfwala, 1949年12月27日 - ）は、エスワティニ（旧スワジランド）の歴史において重要な役割を果たした人物です。彼女は第7代国王ソブーザ2世の王妃の一人であり、現在の第8代国王ムスワティ3世の生母にあたります。1986年以降、ヌトンビは「王母」（ンドロブカティ）として、ムスワティ3世と共に共同元首という独特な地位に就いています。

生涯

ヌトンビは若くしてソブーザ2世と結婚し、ムスワティ3世をもうけました。1982年、ソブーザ2世は崩御する直前に、ヌトンビと別の王妃であるゼリーウェを共同摂政に任命しました。これは、国王が不在の間、または国王が職務を遂行できない場合に、国を統治する役割を二人に託したことを意味します。

ソブーザ2世の死後、直ちに国王を選定するための王室諮問評議会（リココ）が開かれました。評議会はマコセティブ王子を国王に選出し、同時にゼリーウェ王妃を摂政に任命しました。しかし、ゼリーウェ王妃は当時の首相、マバンドラ・ドラミニと政治的な対立を深め、1983年に解任されるという事態が発生します。

ゼリーウェ王妃の解任後、ヌトンビが3年間、摂政の役割を引き継ぎました。しかし、この期間中、実際の政治的な権力はヌトンビではなく、ソジサ・ドラミニ王子が掌握していたとされています。ヌトンビは象徴的な存在として、国の安定を保つ役割を担っていたと考えられます。

1986年、ヌトンビの息子であるマコセティブ王子がムスワティ3世として国王に即位しました。この時、ヌトンビは「王母」（ンドロブカティ）の称号を与えられ、ムスワティ3世と共に共同元首となることが宣言されました。これは、ヌトンビが単なる国王の母としてだけでなく、国家の重要な意思決定に関与する存在であることを意味します。

ヌトンビの共同元首としての役割は、エスワティニの政治体制において独特な位置を占めています。彼女は伝統的な慣習と現代的な政治の間でバランスを取りながら、国の安定と発展に貢献してきました。彼女の存在は、エスワティニの王室における女性の地位と役割を考える上で重要な要素となっています。

ヌトンビの生涯は、エスワティニの近現代史における重要な出来事と深く関わっています。彼女の経験は、伝統的な社会における権力構造、政治的な変動、そして女性の役割の変化を理解するための貴重な手がかりを提供しています。

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