ヌーペディア

ヌーペディアの概要

ヌーペディア（Nupedia）は、ウィキペディアの先駆けとなったウェブ上のインターネット百科事典プロジェクトであり、その設立は2000年にさかのぼります。このプロジェクトは、誰でも無料で記事を閲覧できること、ボランティアの専門家が執筆と査読に関与すること、そしてフリーコンテンツライセンスによる記事の開放が特徴とされていました。ヌーペディアの名称は、「エンサイクロペディア（Encyclopedia）」とリチャード・ストールマンによって始まった自由ソフトウェアプロジェクト「グヌー（GNU）」の二つの言葉から来ています。ヌーペディアは、2003年9月に休止となり、2008年にはCNET UKから「消えてしまった偉大なサイト」の一つに選ばれました。

歴史的背景

ヌーペディアの起源は、1990年代後半にさかのぼります。当時、ジミー・ウェールズは自身の会社ボミスで、誰でもアクセスできる百科事典の構想を抱いていました。彼は幼少期に親から贈られた「ワールドブック百科事典」に感銘を受け、このプロジェクトの実現を夢見ていました。さらに、大学院時代にはリチャード・ストールマンのGNUの思想に触れ、その理念に共感を持ちました。

1999年秋、ウェールズはボランティアで作成するインターネット百科事典のアイデアを持つようになり、当時博士課程に在籍していたラリー・サンガーと出会います。サンガーは、2000年問題に関するニュースを整理するサイトを運営していましたが、2000年になっても大きな問題は起こらず、次のプロジェクトを模索していました。そこで、サンガーは自らのアイデアを持ってメーリングリストに呼びかけ、ウェールズに自身のアイデアを説明します。ウェールズはサンガーにリーダーとなることを提案し、彼は二月にサンディエゴに移住し、ボミスで活動を開始しました。

プロジェクトの運営と課題

2000年3月、ヌーペディアは公式に立ち上げられ、初期のメーリングリストでウェールズがプロジェクトへの思いを共有しました。記事はGNUのような自由なライセンスで公開される予定でしたが、編集は専門家による厳格な査読プロセスを経る必要がありました。参加者の多くは博士号を持つ専門家であり、記事が公開されるまでには厳密な7段階のプロセスを経なければなりませんでした。このため、記事の公開数は伸び悩みました。

例として、2000年9月には初めて完成した記事「atonality」が公開されましたが、初年度に完成した記事はわずか12件にとどまりました。ウェールズ自身も記事を執筆しようとしましたが、専門家からのレビューを受けることにプレッシャーを感じ、最終的に執筆を避けました。

ウィキの導入とウィキペディアの誕生

厳都な査読プロセスが影響し、ヌーペディアは成長の機会を失い、ウェールズとサンガーは打開策を探りました。それがウィキの導入であり、より開かれた形式の百科事典プロジェクトが必要とされました。サンガーは友人と夜の食事中、ウィキの概念を知り、それがヌーペディアの問題解決に役立つと確信しました。2001年初頭、サンガーはウェールズにウィキの利用を提案し、彼もそれに賛同しました。

新しいシステムとして、ウィキペディアが設立されることになります。2001年1月に設立されたウィキペディアは迅速に成長し、数ヶ月で数千件の記事が蓄積されていきました。一方で、ヌーペディアはその運営体制の浸透に失敗し、次第に活動が停止していきました。サンガーの提案のもと、大学などによる運営の提案もありましたが実現には至りませんでした。

ニューペディアの最終的な運命と教訓

2003年9月、ヌーペディアのサーバーがフリーズし、そのまま復旧されることはありませんでした。結局、完成した記事の多くはウィキペディアに吸収されました。サンガーは、ヌーペディアが成功しなかった要因として、専門家による厳しい査読と複雑なシステムが参加者を遠ざけてしまったことを挙げています。

最終的にウィキペディアが急成長する中、ヌーペディアは短いが重要な存在として歴史に名を刻むことになりました。彼らの試みは、情報アクセスの民主化に向けた重要な第一歩とされ、ウィキペディアの成功へとつながってゆきました。

まとめ

ヌーペディアの歴史は、情報の共有と編集方式の革新、そして知識のオープン化に対する挑戦と教訓に満ちています。ウィキペディアが誕生した背景には、ヌーペディアの試行錯誤があり、現代のオンライン百科事典の基盤を築く一因となりました。

もう一度検索