ネイキッド・シティ (アルバム)

ジョン・ゾーンの実験精神が凝縮された『ネイキッド・シティ』

『ネイキッド・シティ』は、音楽家ジョン・ゾーンが1990年に発表したアルバムであり、後に同名のバンドとして知られるようになるグループの原点となった作品です。このアルバムは、単なる音楽作品という枠を超え、ロックバンドの可能性を極限まで追求した実験的な試みとして位置づけられます。

結成の背景

1988年、ジョン・ゾーンは「作曲ワークショップ」という名目で、ロックバンドの編成における限界を試すというユニークなプロジェクトをスタートさせました。このワークショップには、アルト・サックス奏者のジョン・ゾーン自身に加え、ギターのビル・フリゼール、キーボードのウェイン・ホーヴィッツ、ベースのフレッド・フリス、ドラムのジョーイ・バロンという、それぞれが卓越した才能を持つミュージシャンたちが集結しました。彼らは、従来の音楽の枠にとらわれない自由な発想で、様々なジャンルの要素を取り入れた楽曲制作に挑みました。

アルバムの特徴

『ネイキッド・シティ』は、その多様な音楽性が最大の特徴です。ジョン・ゾーンのオリジナル曲に加え、映画音楽やジャズのスタンダードナンバーも収録されており、それらが独自の解釈で再構築されています。例えば、エンニオ・モリコーネの「シシリアン・クラン」、ヘンリー・マンシーニの「暗闇でドッキリ」、ジョニー・マンデルの「私は死にたくない」、オーネット・コールマンの「淋しい女」など、幅広い選曲がアルバムに深みを与えています。

さらに、アルバムは短い楽曲が多数収録されている点も特徴的です。中には10秒にも満たない楽曲もあり、その急展開と変化に富んだ構成は、聴く者を飽きさせません。これは、バンドが「作曲ワークショップ」という形式で活動していたことと深く関係しており、短い時間の中に凝縮された、濃密な音楽体験を提供しています。

参加ミュージシャン

ジョン・ゾーン (John Zorn): アルト・サックス
ビル・フリゼール (Bill Frisell): ギター
フレッド・フリス (Fred Frith): ベース
ジョーイ・バロン (Joey Baron): ドラム
ウェイン・ホーヴィッツ (Wayne Horvitz): キーボード
山塚アイ (Yamatsuka Eye): ボーカル (一部楽曲)

再リリースと影響

『ネイキッド・シティ』は、2005年にジョン・ゾーン自身のレーベル「ツァディク」から発売されたボックス・セット『Naked City: The Complete Studio Recordings』に収録される形で再リリースされました。この再リリースは、当時の音楽シーンに大きな衝撃を与え、多くのミュージシャンに影響を与えました。アルバムが持つ実験精神と、既存のジャンルに縛られない自由な音楽表現は、現在でも多くの音楽ファンに支持されています。

収録曲リスト

1. バットマン "Batman" - 1:58
2. シシリアン・クラン "The Sicilian Clan" - 3:27
3. 射殺宣告 "You Will Be Shot" - 1:29
4. ラテン・クォーター "Latin Quarter" - 4:05
5. 暗闇でドッキリ "A Shot in the Dark" - 3:09
6. リアニメーター "Reanimator" - 1:34
7. スナッグルパス "Snagglepuss" - 2:20
8. 私は死にたくない "I Want to Live" - 2:08
9. 淋しい女 "Lonely Woman" - 2:38
10. 火の絶叫 "Igneous Ejaculation" - 0:20
11. ブラッド・ダスター "Blood Duster" - 0:13
12. ハンマーヘッド "Hammerhead" - 0:08
13. 悪魔の聖域 "Demon Sanctuary" - 0:38
14. オベアー・マン "Obeah Man" - 0:17
15. 雨雀 "Ujaku" - 0:27
16. ファック・ザ・ファクツ "Fuck the Facts" - 0:11
17. スピードボール "Speedball" - 0:37
18. チャイナタウン "Chinatown" - 4:23
19. パンク・チャイナ・ドール "Punk China Doll" - 3:01
20. N.Y.フラット・トップ・ボックス "N.Y. Flat Top Box" - 0:43
21. サイゴン・ピックアップ "Saigon Pickup" - 4:46
22. 007/ジェームス・ボンドのテーマ "The James Bond Theme" - 3:02
23. 罪の巣 "Den of Sins" - 1:08
24. 軽蔑 "Contempt" - 2:49
25. 深夜勤務 "Graveyard Shift" - 3:25
26. インサイド・ストレート "Inside Straight" - 4:10


『ネイキッド・シティ』は、その音楽的な実験性と多様性から、多くの音楽ファンや批評家から高い評価を受けています。ジョン・ゾーンの先駆的な音楽観と、参加ミュージシャンの卓越した演奏技術が融合したこのアルバムは、現代音楽の重要な作品として、今後も語り継がれることでしょう。

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