ネイピアライオン

ライオンエンジンの概要

ライオン（英: Lion）は、1917年から1930年代にかけてイギリスのネイピア社によって開発された航空用レシプロエンジンです。このエンジンは、特にその独特な構造と高い性能により、多くの航空機に採用され、航空史において重要な役割を果たしました。

エンジンの構造と技術

ライオンエンジンは、直列4気筒を3列に配置したW型の12気筒設計を特徴としています。これは、2本のオーバーヘッドカムシャフトによって、それぞれのシリンダーが1シリンダあたり4つのバルブを持つという先進的な技術を取り入れています。また、アルミニウム合金から加工された一体型シリンダーヘッドにより、軽量かつ強度を兼ね備えた設計となっています。

開発と試作

1917年に最初のプロトタイプが試作され、デ・ハビランドDH 9に搭載されましたが、冷却とシリンダーヘッドの加工精度に課題がありました。この結果、設計は分割型シリンダーへと戻され、その後生産が開始されました。初期のライオンIは、25,000 ccの排気量で450 hpを生成し、アメリカのリバティL-12エンジン（400 hp）を上回る性能を持っていました。

商業的成功と採用

ネイピア社はライオンエンジンの商業的な成功を収め、航空機エンジン専業のメーカーとしての地位を確立しました。このエンジンは、実に160種類もの航空機に搭載され、その信頼性と性能から多くのパイロットや航空会社に支持されました。特に、レース用にチューンされたバージョンは、出力が1,300 hpに達し、速度記録や長距離飛行を行う機体にも使用されました。

1922年と1927年に開催されたシュナイダー・トロフィー・レースでは、優勝機のエンジンとしても採用され、名声を得ることとなりました。しかしその後、ロールス・ロイスの競技用エンジンに取って代わられてしまいます。

時代の変化と後継エンジン

1930年代に入ると、航空機の性能向上に伴い、より大きな馬力が要求されるようになりました。そのため、ライオンエンジンはブリストルハーキュリーズやロールス・ロイスマーリンと比較して排気量が少なく、次第に旧式化していくことが避けられませんでした。このため、ネイピアは新たに16気筒で400 hpのレイピアや、24気筒で約1,000 hpのダガーを開発しましたが、いずれも他国のエンジンに対して競争力に欠けていました。最終的には、スリーブバルブ方式を採用したセイバーエンジンの開発が進められます。

スペック

- レイアウト: 12気筒 W型水冷ピストンエンジン
- ボア、ストローク: 5.5 in、5 1/8 in
- 総排気量: 1,462 in³ (25,000 cc)
- 圧縮比: 不明
- 出力: 500 hp / 2,050 rpm
- 重量: 858 lbs (290 kg)

ネイピア ライオン