ネウム

ボスニア・ヘルツェゴビナに存在する、アドリア海に面した小さな町、ネウム。人口約4,300人のこの町は、ヘルツェゴビナ・ネレトヴァ県に属しています。ボスニア・ヘルツェゴビナにとって唯一の海への出口ですが、大規模な港湾施設があるわけではありません。

地理的な特徴として、ネウムは海岸線に沿って細長く伸びており、その両側をクロアチア領土に挟まれています。住民の多くはクロアチア人です。

ネウムの特異な位置関係は、18世紀初頭の歴史的な出来事に起因します。1718年に締結されたパッサロヴィッツ条約（ポジャレヴァツ条約）によって、ダルマチア地方のほぼ全域がヴェネツィア共和国の支配下に入りました。しかし、ヴェネツィアと、当時オスマン帝国の保護下にあったラグサ（現在のドゥブロヴニク）との間で紛争が起こるのを防ぐため、ネウムは両勢力の緩衝地帯としてオスマン帝国領となりました。この時引かれた国境線が、その後、支配する国家が変遷を経ても、現代までそのまま受け継がれているのです。

この歴史的な経緯が、現在のボスニア・ヘルツェゴビナにおけるネウムの独特な位置づけを決定づけています。ボスニア・ヘルツェゴビナは、ネウムを介してアドリア海へのアクセスを確保しているものの、クロアチア領土に囲まれているため、地理的な制約を受けています。そのため、ネウムはボスニア・ヘルツェゴビナにとって、海への象徴的な窓口としての意味合いが強いと言えるでしょう。

観光地としては、アドリア海の美しい景色や温暖な気候が魅力であり、近隣のドゥブロヴニクからの観光客も訪れます。しかし、大規模なリゾート開発などは行われておらず、比較的静かな環境が保たれています。

ネウムは、その歴史的背景と地理的条件から、ボスニア・ヘルツェゴビナという国家の複雑な成り立ちを象徴する場所の一つと言えるかもしれません。

関連項目
ドゥブロヴニク
プロチェ

外部リンク
公式サイト
世界飛び地領土研究会-ドゥブロヴニク - ウェイバックマシン（2002年10月24日アーカイブ分） - ネウムの歴史について
ネウム小旅行～（旧）ユーゴだより
Anlage Neum - Übersicht Opstina Neum

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