ネオジム磁石

ネオジム磁石：現代社会を支える強力な磁力

ネオジム磁石は、ネオジム、鉄、ホウ素を主成分とする希土類磁石の一種であり、その強力な磁力で現代のテクノロジーを支える重要な材料です。この記事では、ネオジム磁石の歴史、特徴、利用例、そして課題と対策について詳しく解説します。

発明と歴史

ネオジム磁石は、1984年に日本の住友特殊金属（現：プロテリアル）の佐川眞人博士によって発明されました。それまで最も強力だったサマリウム-コバルト磁石よりも安価で強力な磁石が求められる中、佐川博士はネオジム、鉄、ボロンを組み合わせることで、それを実現しました。ほぼ同時期にアメリカのゼネラルモーターズでも開発が進められていましたが、粉末焼結製法を確立したのは佐川博士が最初であり、その功績が認められています。

佐川博士は住友金属を退職後も、インターメタリックス社を設立し、ネオジム磁石の改良を続けました。1990年代には、高温環境下での性能低下を防ぐためにジスプロシウムを添加する技術を開発。さらに2012年には、ジスプロシウムを使用せずに性能を維持する方法を研究するため、NDFEB株式会社を設立しました。2022年には、ネオジム磁石の粉末焼結製法の開発により、エリザベス女王工学賞を受賞しました。

特徴

ネオジム磁石の組成は、約60%が鉄、約30%がネオジムで構成されています。耐熱性を向上させるために、ジスプロシウムが添加されることもあります。

その磁力は非常に強力で、フェライト磁石の約10倍の性能を持ちます。磁力の強さはN24からN54までの等級で評価され、数字が大きいほど磁力が強くなります。

近年では、物質・材料研究機構が人工知能を活用し、従来の1.5倍の磁力を持つネオジム磁石の製造に成功しています。

幅広い利用

ネオジム磁石は、小型の製品から大型の産業機器まで、幅広い分野で利用されています。

音響機器: スピーカー、モバイルプレーヤー
情報機器: ハードディスクドライブ（HDD）のヘッド駆動部
産業機器: エレベーターの巻上機、エアコン室外機のモーター
自動車: 発電機、駆動用モーター
その他: 風力発電機、MRI（磁気共鳴画像診断装置）

ホビー用途としても、DIY材料や模型、知育玩具などに利用されています。

課題と対策

ネオジム磁石は、機械的に壊れやすく、熱に弱いという欠点があります。キュリー温度（磁力を失う温度）は約315℃です。

これらの課題に対する対策として、以下の方法が用いられています。

耐熱性の向上: ジスプロシウムを添加することで、保磁力を高め、熱減磁を抑制します。ただし、ジスプロシウムは希少資源であるため、代替技術の研究も進められています。
結晶粒微細化: ネオジム磁石の結晶粒を小さくすることで、熱減磁を改善する試みがあります。しかし、ネオジムは酸素と反応しやすいため、製造環境を厳密に管理する必要があります。
防錆処理: 錆びやすい性質をカバーするために、ニッケルめっきなどの表面処理が施されます。

まとめ

ネオジム磁石は、その優れた磁力と多様な用途で、現代社会に不可欠な材料となっています。一方で、資源の制約や環境への影響など、解決すべき課題も存在します。今後も技術革新が進み、より高性能で持続可能なネオジム磁石の開発が期待されます。

参考

* 佐川眞人 (公益財団法人 国際科学技術財団):https://www.japanprize.jp/laureates/1990/sagawa.html

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