ネッタイツメガエル

ネッタイツメガエル

ネッタイツメガエル（学名: Xenopus tropicalis）は、ピパ科に属する小型のカエルで、一般にはニシツメガエルと呼ばれています。この種は主に西アフリカ赤道付近の熱帯雨林に生息し、特に流れが緩やかな小川などの水域に見られます。ネッタイツメガエルは、同じくツメガエル属に属するアフリカツメガエル（X. laevis）と並び、分子生物学などの研究において非常に重要なモデル生物として位置付けられています。

分類

通常はピパ科のツメガエル属（Xenopus）に分類されますが、形態的な違いから独立したネッタイツメガエル属（Silurana）が提案されたこともあります。しかし、分子系統学的研究からは、ツメガエル属との近縁性が支持されています。

形態

ネッタイツメガエルは、平たい体形状を持ち、体長はおおよそ28から55mm程度です。オスよりメスの方が一般的に大きく成長します。目は上を向いて突出しており、体側には白色の側線器官が並んでいます。四肢は短く柔らかい印象で、その先には水かきと爪を持った指があります。体色は背面が灰白色から黒褐色で、小さな黒色や灰色の斑点が無造作に分布しています。腹側は淡い白か黄色がかり、暗い斑紋が見受けられることもあります。

生息地

このカエルは西アフリカ赤道地域、特にセネガルからカメルーン、さらにコンゴ民主共和国にかけての熱帯雨林に生息しています。水中で生活するため、主に緩やかな流れのある小川に見られますが、北ギニアやスーダンのサバンナでも雨季に水たまりや小さな池に現れることがあります。

生態

乾季の間は、浅い小川や木の根元、石の下、土手の穴などに隠れて過ごします。この時期、エサとしてミミズや昆虫の幼虫、オタマジャクシなどを捕まえて食べます。雨季が始まると、湿った環境を求めて夜に林床を移動し、大きな水たまりで繁殖行動を行います。産卵は草木が茂る水たまりで行われることが多く、卵は植物に付着したり水面に浮かんだりします。

オタマジャクシは大きな口を持ち、顎がなく、上唇には長いひげがついています。尾の鰭は腹側が背側よりも発達しており、体色は基本的には橙色ですが、尾部は透明です。しかし、暗い環境では尾部が黒っぽくなることがあります。オタマジャクシは水中の動物プランクトンを濾過して食べ、大きな水域では群れを形成することがあります。変態は約5cmの体長になった時点で始まります。

人間との関係

IUCN（国際自然保護連合）は、ネッタイツメガエルの保全状態を「軽度懸念（LC）」と評価しています。これは、この種が広い生息域を持ち、適応能力が高いことから、個体数が安定しているとされているためです。

ネッタイツメガエルは同じ属のアフリカツメガエルと同様、分子生物学の領域で頻繁にモデル生物として使われています。特に、アフリカツメガエルは4倍体ですが、ネッタイツメガエルは2倍体であるため、ゲノムが少なく、研究上の利点があります。日本では広島大学がナショナルバイオリソースプロジェクトを通じて、このカエルの収集と保存、研究機関への提供を行っています。これらの生物学的情報は、Xenbaseというデータベースを通じて世界中の研究者に公開されています。

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