ネットワーカー (鉄道車両)

ネットワーカー：イギリスの鉄道車両ファミリー

ネットワーカーは、1980年代後半から1990年代前半にかけて、イギリス国鉄のネットワーク・サウスイースト向けに製造された鉄道車両ファミリーです。このファミリーには、電車3形式と気動車2形式（試作車を除く）が含まれます。製造は、イギリス国鉄の車両製造部門であったBREL、その後継のABB、そしてメトロキャメルが担当しました。

背景と特徴

ネットワーカーは、イギリス国鉄の電車・気動車としては第三世代にあたります。当初はマーク3客車ベースの「第二世代」を凌駕するイギリス最大の鉄道車両ファミリーとなることが計画されていました。ネットワーク・サウスイーストの電車・気動車を全てネットワーカーファミリーの車両で賄う構想がありましたが、経済不況の影響で実現には至りませんでした。

気動車

165形

165形は、郊外列車用の気動車として1990年から1992年にかけてBRELによって製造されました。2両編成31本と3両編成44本が存在し、投入地域によって165/0形と165/1形に区分されます。民営化時には、165/0形がチルターン・レールウェイズに、165/1形がテムズ・トレインズに引き継がれました。後者は、ファースト・グレート・ウェスタン・リンクを経て、現在はグレート・ウェスタン・レールウェイ（2015年までの名称はファースト・グレート・ウェスタン）によって運行されています。165/0形は、ATP（自動列車保護装置）を搭載した数少ない車両の一つです。

166形

166形は、長距離列車用の気動車として1992年から1993年にかけてABBによって製造されました。3両編成21本が製造され、民営化時にはテムズ・トレインズに引き継がれました。その後、ファースト・グレート・ウェスタン・リンクを経て、現在はグレート・ウェスタン・レールウェイ（2015年までの名称はファースト・グレート・ウェスタン）によって運行されています。

直流電車

465形

465形は、4両編成の直流電車で、1991年から1994年にかけて147本が製造されました。BREL製が465/0形、ABB製が465/1形、メトロキャメル製が465/2形と区分され、細部に差異があります。465/2形の一部は一等室導入などの改装を受け、465/9形と改番され、ウィールド編成として知られています。民営化時にはコネックス・サウス・イースタンに引き継がれ、サウス・イースタン・トレインズを経て、現在はサウスイースタンによって使用されています。

466形

466形は、2両編成の直流電車で、1993年から1994年にかけてメトロキャメルによって43本が製造されました。4両編成の465形と併結して6両編成や10両編成で使用されることが多かったですが、近年は地方線区で単独運用にも就いています。民営化時にはコネックス・サウス・イースタンに引き継がれ、サウス・イースタン・トレインズを経て、現在はサウスイースタンによって使用されています。

交直流電車

365形

365形は、4両編成の交直流電車であり、1994年から1995年にかけてABBで41本が製造されました。当初は465形や466形と同様の前面デザインでしたが、運転台への空調取り付けに伴いデザインが大きく変更されました。交流・直流双方に対応していますが、両区間を直通する運用はほとんどなく、集電靴とパンタグラフを同時装着することも稀です。

直流の南東方面と交流のグレート・ノーザン・ルートに分けて投入され、民営化時には前者がコネックス・サウス・イースタン、後者がウェスト・アングリア・グレート・ノーザンに引き継がれました。コネックス・サウス・イースタンがサウス・イースタン・トレインズに交代後、同社の365形は2004年にウェスト・アングリア・グレート・ノーザンに転属し、グレート・ノーザン・ルートに全車両が集結しました。その後、ファースト・キャピタル・コネクトを経てゴヴィア・テムズリンク・レールウェイに渡りましたが、2017年から運用を離脱する車両が発生し、2021年5月15日に全車両が引退しました。なお、2018年から2019年にかけては385形の導入遅れにより10本がアベリオ・スコットレールに貸し出されました。

試作車

457形・316形

457形と316形は、試作車として製造された4両編成1本に与えられた形式名です。1989年に210形の改造によって直流車両の457形が落成し、翌1990年には中間車1両を313形電車の改造車と置き換え、316形と改番して交流区間での試験を実施しました。

計画された形式

341形・342形

341形は、クロスレール向けに計画された車両でしたが、1994年に計画と共に中止されました。クロスレールは2008年に建設が決定し、2023年以降に全通する予定です。2017年には同線向けに345形が導入されました。

342形は、CTRL（Channel Tunnel Rail Link）の国内列車向けとして計画されました。同線は2007年に全通し、国内列車は2009年から395形を用いて運行が開始されました。

371形・381形・471形

371形と381形は、「ユニバーサル・ネットワーカー」として計画された交直両用電車です。371形はテムズリンク2000計画の一環としてテムズリンクで使用される予定でした。381形は、ケント沿岸部、グレート・ノーザン・ルート、ロンドン・ティルベリー・アンド・サウスエンド・レールウェイの3地域で使用される計画でした。

471形は、「メインライン・ネットワーカー」の愛称の下、ケント・サセックス方面の長距離列車向けとして計画されていました。