ネパール地震 (2015年)

2015年ネパール地震：甚大な被害と復興への道のり

2015年4月25日、ネパールを未曾有の激震が襲いました。この地震は、ネパール大地震とも呼ばれ、ネパールの首都カトマンズ北西77kmを震源とし、マグニチュード（Mw）7.8を記録しました。この地震によって、ネパール国内だけでなく、インドや中国のチベット自治区など周辺国にも大きな被害が発生しました。

地震の概要

地震は現地時間11時56分に発生し、震源の深さは15kmでした。アメリカ地質調査所（USGS）の推定によれば、地震の規模はMw7.8でしたが、中国[[地震局]]はMs8.1、気象庁松代地震観測所はMs8.2と推定しています。この地震によって、ネパールでは建物倒壊、雪崩、土砂災害などが多発し、甚大な被害を引き起こしました。

カトマンズでは、メルカリ震度階級でIXという強い揺れが観測され、バラトプルやビラートナガルでもVIIIの揺れが報告されています。ネパールやインド北部は元々地震が多い地域ですが、耐震性のないレンガ造りの建物が多いため、被害が拡大しやすい状況でした。特に、カトマンズ盆地は地盤が非常に軟弱な上、プレート境界断層の上盤側に位置しているため、地震に非常に弱い地域でした。

地震のメカニズム

この地震は、インドプレートがユーラシアプレートに衝突し、沈み込むことで発生したと考えられています。この地域では、プレートの相対速度が年間約45mmであり、地震活動が活発です。このプレート運動によって、ヒマラヤ山脈が形成されており、現在も年間約5mmの速度で隆起しています。地震の震源断層は、カトマンズを含む東西150km、南北120kmの範囲に及び、最大で4.1m以上ずれた可能性も指摘されています。これは、兵庫県南部[[地震]]（阪神・淡路大震災）の約30倍のずれに相当します。

国土地理院の解析によれば、カトマンズ北西70kmの震源から北北東傾斜の断層による逆断層滑りが起こり、地表で最大1.2m隆起し、地下では最大4mの断層滑りが発生したと考えられています。

余震の発生

本震後も、多数の余震が発生しました。特に、本震の約34分後にはM6.6の余震が、約25時間後にはM6.7の最大余震が発生しました。さらに、本震から17日後には震源域東端付近でM7.3の地震が発生し、これらの余震によって、被害がさらに拡大しました。特にM6.7の余震では、エベレストのベースキャンプ付近で雪崩が再発しました。

被害状況

地震の揺れはネパール全域に及び、インド北部、バングラデシュでも観測されました。ネパールでは、カトマンズを中心に多くの建物が倒壊し、歴史的な建造物や世界遺産も大きな損傷を受けました。カトマンズのダルバール広場、スワヤンブナート、ダラハラ塔などの歴史的建造物も被害を受けました。パッカーの聖地であるタメル地区も大きな被害を受け、救助活動は困難を極めました。

国連は、ネパールの人口の約30%にあたる約800万人が被災したと発表し、経済的損失は50億ドル（約6,000億円）と推定されました。この被害はネパールの2014年のGDPの約4分の1に相当します。ネパール政府は、地震による死者は8,460人、負傷者は2万人以上と発表しました。また、救援物資の輸送の遅延や、ネパール政府の対応への批判も起こりました。

エベレストでの雪崩

エベレスト登山ベースキャンプ付近では、大規模な雪崩が複数回発生し、18人の登山者が死亡しました。当時ベースキャンプには約1000人の登山者が滞在しており、多くの登山者が下山困難な状況に陥りました。エベレスト史上最悪の惨事とも言われています。

周辺国の被害

インドでは、建物の倒壊などにより66人が死亡しました。バングラデシュでは、27日までに4人の死亡が確認されました。中国のチベット自治区では、約1,200棟の家屋が全壊し、約25,000人が避難しました。

国際社会の対応

国際連合は、大規模な救援活動の準備を行い、ユニセフは子供たちへの緊急募金活動を開始しました。アジア開発銀行は、300万ドルの緊急支援と2億ドルの復興費用を拠出しました。

インドは、地震発生直後から救援部隊を派遣し、物資の輸送とインド国民の救出を行いました。パキスタン、中国、日本も救援チームを派遣しました。

日本は、国際緊急援助隊を派遣し、緊急援助物資の供与と無償資金協力を行いました。しかし、空港の混乱により、援助隊の到着が遅れるなどの問題も発生しました。また、自衛隊も救援活動に参加し、物資の輸送と被災者の救助にあたりました。

アメリカ、カナダ、韓国、イギリス、イスラエル、シンガポール、マレーシア、オーストラリア、バチカンなど、多くの国や国際機関が支援活動を行いました。アメリカは、災害対策チームと物資を派遣し、在日米海兵隊もオスプレイを派遣しました。

救助活動の難航

余震や重機の不足、病院や医師の不足、空港の未整備、山岳地帯の村落の孤立化などにより、救助活動は困難を極めました。生存率が急激に下がる地震発生後72時間後も救助は進まず、被災地を目指す救援隊もなかなか到着できない状況でした。ネパール政府は、4月29日には捜索・救助隊員は十分だとして外国の捜索・救助隊の派遣を要請しないように伝えました。

その他の問題点

地震で被災した子供が強制的に児童労働に従事させられたり、人身売買や性犯罪に巻き込まれるケースも多発しており、貧困につけ込む形での被害拡大が懸念されています。

この地震は、ネパールの脆弱なインフラと災害対応能力の課題を浮き彫りにしました。復興には長い年月が必要であり、国際社会の継続的な支援が不可欠です。

関連情報

• - 参考情報

- 2015年4月25日ネパールの地震に伴う地殻変動 - 国土地理院
- 4月25日ネパールの地震] - 名古屋大学[地震火山研究センター

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