ネルトリンゲンの戦いにおけるフェルナンド・デ・アウストリア枢機卿王子

ネルトリンゲンの戦いにおけるフェルナンド・デ・アウストリア枢機卿王子

この作品は、フランドルのバロック期を代表する画家ピーテル・パウル・ルーベンスが1634年から1635年にかけて制作した油彩画です。キャンバスに描かれたこの騎馬肖像画は、スペイン国王フェリペ4世の弟であるフェルナンド・デ・アウストリア枢機卿をモデルとしています。フェリペ4世が購入後、マドリードの旧王宮に飾られ、スペイン・ハプスブルク家の権威を示す象徴となりました。現在はプラド美術館に所蔵されています。

作品の背景

1634年、フェルナンド・デ・アウストリア枢機卿は、兄フェリペ4世によってネーデルラント総督に任命されました。ブリュッセルへ赴任する途中、彼はプロテスタント軍とのネルトリンゲンの戦いで勝利を収めました。この絵画は、その戦勝を記念して、フェルナンドがブリュッセルに到着した後にルーベンスによって制作されました。

作品の詳細

フェルナンドは、完全な鎧を身に着け、黒い帽子を被った姿で描かれています。彼が手にしている指揮棒と赤い肩帯は、統治者としての地位を象徴しています。フェルナンドの頭上には、ユーピテルの象徴である鷲と雷によって、憤怒の寓意像が描かれており、彼の力強さと勇敢さを際立たせています。背景には、激しい戦闘の様子が描かれ、戦場での勇姿が表現されています。

ルーベンスは、この作品で動揺する馬と、それに対照的に冷静に馬を操るフェルナンドの姿を描いています。馬が後足で立ち上がる姿勢、すなわちルバードは、騎馬像においてよく用いられる構図であり、馬上の人物の統治能力を示すものです。フェルナンドの卓越した能力と美徳は、絵画の下部に配置されたプレートに文字で記されています。

作品のポイント

構図: 動と静の対比を巧みに用いて、フェルナンドの統治者としての落ち着きと力を表現。
象徴: 鷲と雷、指揮棒、赤い肩帯など、統治者の地位や力を象徴するモチーフが効果的に配置。
背景: 戦闘の様子を描くことで、フェルナンドの軍事的勝利を強調。
ルバード: 馬の立ち姿は、騎乗者の統治能力を示す伝統的な表現。

この作品は、ルーベンスの卓越した画力と、バロック美術の力強さを象徴する傑作として、今日まで高く評価されています。

参考資料

国立プラド美術館『プラド美術館ガイドブック』国立プラド美術館、2009年。ISBN 978-84-8480-189-4。
プラド美術館公式サイト、ピーテル・パウル・ルーベンス『ネルトリンゲンの戦いにおけるフェルナンド・デ・アウストリア枢機卿王子』 （英語）

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