ネヴァ川の戦い

ネヴァ川の戦い：ロシアとスウェーデンの間で繰り広げられた戦いの真相

1240年7月15日、ネヴァ川河畔（現在のウスチ・イジョラ付近）で、ノヴゴロド公国とスウェーデン軍（第二次スウェーデン十字軍）の間でネヴァ川の戦いが行われました。この戦いは、ロシア史上ではアレクサンドル・ネフスキーによる民族的勝利として位置づけられていますが、他の国では記録が少なく、その規模や存在そのものを疑問視する説もあります。

戦いの背景

スウェーデン軍の侵攻の目的は、ノヴゴロドが100年以上握ってきたネヴァ川やラドガ湖の水運を奪取し、ヴァリャーグからギリシアへの道におけるロシア勢力による独占を崩すことでした。

ロシア側の資料

ネヴァ川の戦いの存在は、ロシアの資料でのみ確認できます。最初の文献は14世紀の第一ノヴゴロド年代記で、敵の連合艦隊襲来の報を受けたノヴゴロド公ヤロスラフ2世の息子アレクサンドル・ヤロスラヴィチ（ネフスキー）が、小規模な手勢と地元の民兵を率いて敵がラドガ湖に到達する前に会敵したと記されています。

年代記には、戦闘の経過が以下のように記されています。

スウェーデン人は強大な陸軍を、ノルウェー人とフィンランド人、タヴァスティア人は膨大な数の軍船を伴い、またスウェーデン人はその王子や聖職者も同伴していた。彼らはイジョラ川の河口のネヴァに留まり、ラドガ湖を、ひいてはノヴゴロドの全領域を奪おうとしていた。それでも慈悲深い神は我ら（ノヴゴロド）を愛し、外敵から守護なさった。スウェーデン軍がラドガへ向かっているとするお告げを受けても、アレクサンドル（ネフスキー）は怯むことなく、ノヴゴロド人やラドガの人々と共に赴き、聖ソフィアと神の母、聖母マリアの守護を受けて、7月15日、聖キリクとウリタの日に彼ら（スウェーデン人）を打ち破ったのである。

大軍を小勢で破ったこの戦いは「ネヴァ川の奇跡」と呼ばれるようになり、アレクサンドル・ヤロスラヴィチは「ネフスキー（ネヴァ川の）」という通称を得ました。

スウェーデン側の資料

ノヴゴロドと交戦したとされるスウェーデンには、ネヴァ川の戦いを伝える資料は存在しません。

当時のスウェーデンは、1222年にヨハン1世が死去した後、事実上の内戦状態にありました。王位を巡る争いやノルウェーとの戦争の危機など、国内は不安定な状況であり、大規模なノヴゴロド遠征を行う余裕はなかったと考えられています。

諸説

近年の研究では、スウェーデンの遠征は1237年にローマ教皇がウプサラの大司教に送った手紙が間接的に影響した可能性が指摘されています。この手紙は十字軍の結成を呼びかけるもので、攻撃対象はノヴゴロドではなく、教会に敵対したとされるフィンランドのタヴァスティア人でした。しかし、目的や国籍の異なる軍勢がネヴァ川へ向かい、アレクサンドル・ネフスキーと衝突したという説があります。

一方で、ネヴァ川の戦いは国境の小競り合いに過ぎず、後のロシアの政治的な目的のために誇張されたものに過ぎないとする説も根強く存在します。

まとめ

ネヴァ川の戦いは、ロシアとスウェーデンの間で繰り広げられた戦いですが、その規模や存在については様々な議論があります。ロシア側の資料では大きな勝利として描かれていますが、スウェーデン側の資料はなく、その信憑性については疑問視されています。真相は歴史の闇に包まれていますが、様々な説が存在し、今もなお研究が進められています。

関連項目

* リフラの戦い

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