ノウス・ホモ

ノウス・ホモ（novus homo）とは

ノウス・ホモ（複数形: novi homines）は、共和政ローマ後期において、祖先に高位の公職者を持つ者がいないにも関わらず、執政官にまで上り詰めた人物を指す言葉です。ラテン語で「新しい人」を意味し、「新人」と訳されることもあります。

共和政ローマ社会におけるノウス・ホモ

共和政ローマ初期においては、元老院議員や各公職は、血統貴族であるパトリキによってほぼ独占されていました。しかし、プレブス（平民）が勢力を増すにつれて、彼らも身分闘争を経てこれらの公職に就任する道が開かれていきました。とは言え、すべての成人男性に元老院議員への道が開かれていたわけではなく、実質的には旧来のパトリキに加え、富裕な上層プレブスが元老院を構成していました。

元老院を構成したパトリキと上層プレブスは一体化し、ノビレス（貴族）と呼ばれるようになります。共和政中期以降、ノビレスの家系出身者以外がローマの支配階層に参入することは困難になっていきました。このような状況下で、その困難を乗り越えてノビレス以外の家系から支配階層に参入した者、具体的には最高位の公職である執政官となった者が「ノウス・ホモ」と呼ばれたのです。

ノウス・ホモの定義

ノウス・ホモの定義は、ノビレスの定義と密接に関わっています。どの時代までに支配階層に加わった者がノビレスに含まれ、どの時代以降はノビレスに含まれずノウス・ホモとして扱われるのか、明確な線引きは難しいのが現状です。しかし、一般的には、祖先に執政官級の公職者を輩出したことのないプレブス系の家族出身者が、ノウス・ホモと定義されます。代表的な人物としては、ガイウス・マリウスやマルクス・トゥッリウス・キケロが挙げられます。

ノウス・ホモの困難と変遷

ノウス・ホモは、公職選挙においてノビレスの候補者に対して不利な立場にあったと言われています。家柄や人脈で勝るノビレスに対し、実績や弁論術、民衆からの支持などで差をつけなければ、当選は難しかったでしょう。しかし帝政期に入ると、皇帝を中心とした支配機構の中で身分の流動化が進み、共和政期ほどノウス・ホモが珍しい存在ではなくなりました。

主なノウィ・ホミネス

ルキウス・ムンミウス
マルクス・ポルキウス・カトー
マルクス・トゥッリウス・キケロ
ガイウス・ドゥイリウス
ガイウス・マリウス
ガイウス・コルネリウス・タキトゥス
* ガイウス・フラミニウス

ノウス・ホモの出現は、閉鎖的な社会に変化をもたらし、ローマ社会の流動性を高める一因となりました。彼らの活躍は、能力次第で身分を超えて活躍できる可能性を示し、後の時代にも影響を与えたと言えるでしょう。

もう一度検索