ノスリ

ノスリ（鵟）

ノスリ（学名: Buteo japonicus）は、タカ目タカ科ノスリ属に分類される鳥類の一種です。以前はヨーロッパノスリと同種とされていましたが、2008年の分子系統解析により、別種であることが確認されました。

分布

ノスリは、中央シベリア、モンゴル、中国、日本といった広範囲に分布しています。夏には亜寒帯や温帯地域で繁殖し、冬になると熱帯や温帯地域へ渡って越冬します。

日本国内には、以下の亜種が生息しています。

亜種ノスリ (B. j. japonicus): 北海道、本州中部以北、四国の山地で繁殖し、繁殖地では留鳥として生息します。また、南西諸島を除く全国に冬鳥として飛来します。
亜種ダイトウノスリ (B. j. oshiroi): 大東諸島に留鳥として生息していましたが、現在は絶滅したと考えられています。
亜種オガサワラノスリ (B. j. toyoshimai): 小笠原諸島に留鳥として周年生息しています。

形態

ノスリの全長は50–60cm、翼開長は100–140cm、体重は500–1300gです。一般的にメスの方がオスよりも大きくなります。背面は褐色、腹面は淡褐色の羽毛で覆われており、喉の羽毛は黒色をしています。虹彩は褐色です。

亜種による形態の違いは以下の通りです。

ダイトウノスリ: 全体的に黄土色を帯びており、背面や翼の羽毛の赤みが強いです。
* オガサワラノスリ: やや小型で、背面の羽毛の色が淡く、全体的に白っぽい印象です。

系統と分類

かつて広義のノスリとされていたグループは、分子系統解析の結果、ヨーロッパノスリ、ノスリ、B. refectusの3種に分割されました。ノスリはマダガスカルノスリに、B. refectusはオオノスリに近縁であることが判明しています。ソウゲンノスリは、現在ではヨーロッパノスリに含まれています。

生態

ノスリは、平地から山地の森林に生息し、単独またはペアで生活します。食性は動物食で、昆虫類、節足動物、陸生の貝類、ミミズ、両生類、爬虫類、鳥類、小型哺乳類など、様々な動物を捕食します。

繁殖期には縄張りを形成し、樹上や断崖の上に木の枝を組み合わせた巣を作ります。日本では4–5月に2–4個の卵を産み、主にメスが抱卵します（オスも抱卵することがあります）。抱卵期間は33–35日で、雛は孵化後50–55日で飛翔できるようになり、その40–55日後に独立します。生後2–3年で性成熟を迎えます。

狩りの際には、空中で静止する「停飛」から急降下するパターンと、樹上から急降下して地面すれすれを飛行するパターンが見られます。和名の由来は、後者の狩りの様子から「野を擦る」ように見えることに由来すると言われています。獲物に気づかれないように接近するため、地面すれすれを飛行すると考えられていますが、獲物の直前で急上昇する行動も確認されています。

保全状況評価

ノスリは、種として分割されたばかりであるため、IUCNレッドリストでは調査中（UR）と評価されています。

亜種ダイトウノスリは、環境省レッドリストで絶滅種に指定されており、種の保存法に基づく国内希少野生動植物種にも指定されていました。亜種オガサワラノスリは、環境省レッドリストで絶滅危惧IB類（EN）に指定されており、文化財保護法に基づく国の天然記念物、および種の保存法に基づく国内希少野生動植物種に指定されています。

人間との関係

ノスリは人里近くにも生息するため、環境破壊による生息地の減少や、獲物の減少の影響を受けやすく、生息数は減少傾向にあります。鷹に似ていますが、鷹狩には利用できないため、奈良時代には「くそとび」と呼ばれていたという記録があります。

もう一度検索