ノティール

フランスの深海探査艇「ノティール」

ノティール（Nautile）は、フランス国立海洋開発センター（CNEXO）とその後継機関であるフランス国立海洋開発研究所（IFREMER）によって建造された有人潜水調査艇です。1984年11月に就役し、水深6000メートルまで潜水できる能力を有しています。バチスカーフを基に開発されたこの小型潜水艇は、深海探査において重要な役割を果たしてきました。

概要

ノティールは、全長8メートル、幅2.7メートル、高さ3.81メートルで、パイロット2名と科学研究スタッフ1名の計3名が搭乗できます。耐圧殻はチタン合金製で、深海の水圧に耐える堅牢な構造を備えています。浮力材にはシンタクチックフォームが使用され、潜航時には1トンの鉄球バラストが用いられます。推進装置は、メインプロペラに加え、船体前後左右に4基のスラスターを備えており、優れた運動性を実現しています。さらに、水銀を用いたトリムタンクにより、船体のピッチ姿勢を制御することが可能です。3つの観測窓のほか、静止画像カメラ2基、カラービデオカメラ2基、フラッドライトを装備し、海底の様子を詳細に観察できます。また、2本のリモート操作ロボットアームにより、海底のサンプル採取や各種作業も可能です。

ノティールという名称は、フランス語でオウムガイを意味し、ジュール・ヴェルヌの小説に登場する潜水艦ノーチラス号やアメリカ海軍の原子力潜水艦ノーチラスなどと同じ語源を持ちます。

科学調査

ノティールは、潜水支援母船である「ナディール」「アタラント」「プルクワ・パ?」に搭載され、世界各地の海域で海洋地質学や深海生物学の研究に貢献しています。処女航海ではプエルトリコ海溝で6740メートルの潜航深度を記録し、その後、日本との共同調査「KAIKO計画」では日本海溝などで27回の潜航を実施。プレートテクトニクス研究に大きな進展をもたらしました。特に、銚子沖の海底で沈み込みプレート境界を直接視認・撮影したことや、襟裳海山に海底地震計や傾斜計を設置したことは、実証的なプレートテクトニクス研究の先駆けとなる成果です。改良を重ねながら、2008年時点で累計1600回以上の潜水を行っています。

その他の活動

ノティールはその潜航能力を活かし、科学調査以外にも様々な活動を行っています。1987年以降、数度にわたりタイタニック号の残骸を調査し、その映像を記録しました。2002年には、スペイン沖で発生した石油タンカー「プレスティージ号」の油濁事故の清掃作業にも参加しました。さらに、2008年5月には完成したANTARESニュートリノ望遠鏡の建設作業にも携わっています。2009年6月にはエールフランス447便墜落事故のブラックボックス捜索にも貢献しました。

まとめ

ノティールは、その卓越した潜航能力と多様な装備により、海洋研究の最前線で活躍するだけでなく、難破船調査や事故調査など、様々な分野で重要な役割を果たしています。深海探査の歴史において、その名は不可欠なものとなっています。

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