ノーチラス号

ジュール・ヴェルヌが創造した伝説の潜水艦：ノーチラス号

ジュール・ヴェルヌの代表作『海底二万里』に描かれるノーチラス号は、単なる潜水艦という枠を超えた、神秘と冒険に満ちた存在です。1865年頃、ネモ船長によって設計・建造されたこの潜水艦は、その革新的な技術と謎めいた船長の人物像によって、読者に無限の想像力を掻き立てます。

圧倒的な性能と洗練されたデザイン

ノーチラス号は、紡錘形の艦体に二重船殻構造を採用し、高い耐圧性能を実現しています。窓はすべて耐圧性に優れたクリスタルガラス製。動力源は、水銀と海水から得られる塩化ナトリウムを用いたナトリウム/水銀電池による電気モーターで、最高速度は50ノットに達します。排水量は通常航行時で1,356.48トン、潜水時は1,507トン。艦首には、他の船舶を攻撃できる衝角も備えています。

艦内は、想像を超える豪華さと機能性を兼ね備えています。艦長室、食堂、調理室、乗組員室、浴室、機関室に加え、12,000冊もの蔵書を誇る図書室や、美術品や海洋生物のコレクションが展示されたサロンも存在します。サロンにはパイプオルガンが置かれ、巨大な展望窓からは海中景観を堪能できます。空気供給システムも充実しており、150万リットルもの空気を蓄えることができ、乗組員は自給自足可能な生活を送ることができました。

謎に包まれた建造と多国籍クルー

ノーチラス号は、ル・クルーゾ、ロンドン、リバプール、グラスゴー、パリ、プロシア（クルップ社）、ムータラ（スウェーデン）、ニューヨークといった世界各地の工場から調達した資材を用いて、無人島で建造されました。建造費は168万7千フラン、美術品などを含めると総額400～500万フランに上ったと推定されています。

クルーは多国籍で構成され、独自の言語を使用していたとされています。艦のエンブレムにはネモ船長の頭文字「N」と、「MOBILIS IN MOBILI（動中の動）」というラテン語の銘が刻まれています。これは、常に動き続けるノーチラス号の運命を象徴していると言えるでしょう。

ネモ船長の最期とノーチラス号のその後

30年の航海の後、多くのクルーを失ったネモ船長は海洋探検から退き、孤島にノーチラス号を隠匿します。そこで、漂着したアメリカ人に自らの来歴を明かし、遺言を残して亡くなります。アメリカ人たちは遺言に従い、ノーチラス号をネモ船長の墓標として、洞窟の深淵に沈めました。

多様な作品への登場と不朽の名声

『海底二万里』での登場以降、ノーチラス号は数多くの作品にその姿を見せてきました。ディズニー映画やアニメ、小説、ゲームなど、様々なメディアで、時に超近代的な装備を備えた万能潜水艦として、人々を魅了し続けています。これらの作品を通して、ノーチラス号は、単なる架空の潜水艦としてだけでなく、冒険、謎、そして技術革新の象徴として、永遠に人々の記憶に刻まれる存在となりました。

ヴェルヌのノーチラス号と現実世界の潜水艦

ヴェルヌのノーチラス号は、1800年にロバート・フルトンが設計した潜水艦「ノーチラス」にインスピレーションを得て創作されたと言われています。その後、アメリカ海軍は世界初の原子力潜水艦に「ノーチラス」と命名、北極海横断潜航に成功するなど、フィクションと現実世界の繋がりを象徴する存在となっています。東京ディズニーシーやディズニーランド・パリにも、ノーチラス号をモチーフにしたアトラクションが存在し、多くの人々を魅了しています。

ノーチラス号は、単なる潜水艦ではなく、時代を超えて人々に夢と感動を与え続ける、不朽のフィクションとして存在し続けるでしょう。

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