ノリウツギ

ノリウツギ（糊空木）の詳細解説

ノリウツギ（学名: Hydrangea paniculata）は、アジサイ科アジサイ属に分類される落葉低木です。かつて樹皮から製紙用の糊を採取したことから、その名が付けられました。別名としてノリノキ、サビタなどとも呼ばれ、地域によって様々な呼び名が存在します。

名称の由来

和名であるノリウツギは、その名の通り、樹皮から糊を採取していたことに由来します。北海道や東北地方ではサビタという名が一般的ですが、植物学者の辻井達一は、この名がアイヌ語に由来する可能性を示唆しています。アイヌ語ではラスパ・ニと呼ばれ、「槍の柄と穂先を継ぐ棒の木」という意味を持ちます。中国名では水亞木と呼ばれています。

分布と生育環境

ノリウツギは、日本、南千島、樺太、中国東北部、台湾に分布しています。日本では、北海道から九州にかけて自生し、山野や山地の低木林、林縁などを好みます。湿った場所を好む一方で、日陰では育ちにくい性質を持ちます。特に、奈良県の大台ケ原はノリウツギの自生地として知られています。また、その花にはハナカミキリやハナムグリなどの昆虫が集まります。

形態と生態

ノリウツギは落葉広葉樹の低木であり、通常は2〜3m程度の高さに成長しますが、最大で5mに達することもあります。他の木に寄りかかるように成長することもあります。成木の樹皮は縦に裂けて剥がれ落ち、若木の樹皮は淡褐色から茶褐色をしています。葉は対生または3輪生し、卵形から楕円形で、葉の縁は鋸歯状になっています。

花期は7月から8月で、枝先に円錐状の白い小花を多数つけます。装飾花は白色から淡い紫色、そして淡い紅色へと変化します。果実は冬まで残り、風によって種子が散布されます。冬芽は円錐形から卵形をしています。

利用

ノリウツギは、その美しい花を観賞するために庭木として利用されます。また、樹皮からは和紙の糊料が採取されます。かつては、8年生以上の樹齢のものが良質な糊料として珍重されました。近年、日本では庭園樹としての利用は少ないものの、アメリカやカナダでは庭園や公園の植栽として広く利用されています。

文化

ノリウツギ（サビタ）は、原康子の小説『サビタの記憶』や『挽歌』に登場し、釧路湿原の風景を彩る花として描かれています。また、釧路の画家、佐々木栄松の絵画にも、その美しい姿が描かれています。

品種

ノリウツギには、いくつかの品種が存在します。

ヒダカノリウツギ (Hydrangea paniculata f. debilis)
ビロードノリウツギ (Hydrangea paniculata f. velutina)
ミナヅキ (Hydrangea paniculata f. grandiflora*) - 別名：ノリアジサイ


これらの品種は、それぞれ異なる特徴を持ち、観賞用として栽培されています。

ノリウツギは、その美しい花と多様な利用法で、人々に親しまれてきた植物です。

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