ノルトハウゼン市電

ドイツのテューリンゲン州に位置する都市、ノルトハウゼンを走る路面電車がノルトハウゼン市電です。この路線網は、単なる市街地の交通手段にとどまらず、郊外を結ぶ鉄道路線への直通運転、通称トラムトレインを実施している点で特筆されます。

歴史

ノルトハウゼンにおける路面電車建設計画は19世紀末、1898年に始まりました。市と民間企業が協力して建設が進められ、1900年 8月25日に最初の路線が開業します。当初は民間による運営でしたが、第一次世界大戦後の1922年からはノルトハウゼン市の公営事業へと転換されました。

その後、路線の一部縮小はあったものの、新型車両導入による近代化が進められます。しかし、第二次世界大戦末期の1945年、ノルトハウゼンは大規模な空襲に見舞われ、路面電車施設も壊滅的な被害を受けました。

戦後、東ドイツの一部となったノルトハウゼン市電は、幾度かの組織再編を経て、1951年以降は公営企業であるノルトハウゼン運輸公社によって運営されることになります。1980年代まで路線網に大きな変化はありませんでしたが、車両については長らく2軸車が主力を担っていました。1980年代に入ると、一部区間の延伸が実施され、輸送力増強のため連接車の導入も始まりましたが、この時代の多くの車両は他都市からの転属車でした。

ドイツ再統一を目前にした1990年、運営組織は有限会社であるノルトハウゼン市運輸・都市清掃会社に移行し、2021年現在も同社が運営を担っています。再統一後は、車両をはじめとする設備の刷新が積極的に進められました。老朽化した旧東ドイツ時代の車両を置き換えるため、再統一直後には旧西ドイツ各地から路面電車車両が譲り受けられました。さらに、1999年以降は車内全体が低床の超低床電車の導入が継続的に行われ、バリアフリー化が進んでいます。また、後述するハルツ狭軌鉄道との直通運転は2004年から開始されています。

ノルトハウゼン・モデル（トラムトレイン）

ノルトハウゼン市電の最も大きな特徴は、ドイツ鉄道のノルトハウゼン駅に隣接する電停から、軌間1,000 mmのハルツ狭軌鉄道（非電化）へ直通運転を行っている点です。両路線の乗り換え利便性は、東ドイツ時代の1981年に駅前電停で共用プラットホームが完成したことで既に向上していましたが、これをさらに発展させ、市電車両がそのままハルツ狭軌鉄道の線路に乗り入れる形が実現しました。この直通運転は2004年 5月1日に営業運転を開始しました。

この直通運転に対応するため、バイモード車両「コンビーノ・デュオ」が導入されました。この車両は、市電の電化区間では架線からの電力で走行し、ハルツ狭軌鉄道の非電化区間では搭載するディーゼルエンジンで発電した電力で走行する電気式気動車として機能します。また、ハルツ狭軌鉄道側も直通運転の起点としてイルフェルト/ネアンダー病院駅を新設しました。

ノルトハウゼン駅とイルフェルト間の利用客増加など、この直通運転は多大な効果をもたらしました。このような運行形態はトラムトレインの一つとして位置づけられており、「ノルトハウゼン・モデル」とも呼ばれています。

車両

ノルトハウゼン市電では、主に以下の車両が運用されています。

コンビーノ: シーメンス製の超低床3車体連接車です。1999年の初回発注以降、複数回に分けて導入が進められ、バリアフリー化に貢献しています。
コンビーノ・デュオ: ノルトハウゼン・モデル用に開発されたバイモード対応の超低床車両です。ディーゼルエンジンを搭載しており、電化区間と非電化区間の両方で走行可能です。

これらの現有車両に加え、動態保存や観光目的で、引退した歴史的な車両も在籍しています。

過去には、ドイツ再統一後に旧西ドイツ各地から譲渡された連接車（GT4）が多数活躍しましたが、超低床電車の導入により置き換えられ、2012年に営業運転を終えました。

2021年現在、ノルトハウゼン市電は「ノルトハウゼン・モデル」の系統を含む3つの系統で運行されています。

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