ノルトヴィント作戦

ノルトヴィント作戦 (Unternehmen Nordwind)

ノルトヴィント作戦は、第二次世界大戦末期の1945年1月1日から1月25日にかけて、ドイツ国防軍が西部戦線で実施した最後の攻勢作戦です。フランス北東部のアルザス＝ロレーヌ地方を舞台に、連合軍に対する大規模な攻撃が展開されました。

作戦の背景と目的

1944年12月16日に開始されたバルジの戦いにおいて、ドイツ軍はベルギーのアルデンヌの森に侵攻しましたが、年末にはその勢いは衰え、連合軍の反撃が強まっていました。特に、ドイツ軍に包囲されたバストーニュの救援のため、アメリカ第3軍が南から進撃し、激戦が繰り広げられていました。

このような状況下で、アドルフ・ヒトラーはバルジの戦いの戦況を打開するため、2つの作戦を認可しました。その一つが、連合軍の飛行場に対する大規模な空襲作戦であるボーデンプラッテ作戦、そしてもう一つが、このノルトヴィント作戦でした。

ノルトヴィント作戦の目的は、アメリカ第3軍の南側のアルザス平原で新たな戦線を開き、同軍のバストーニュへの増援を牽制することにありました。ヒトラーは作戦開始3日前の1944年12月28日、師団長らへの演説で、ヴォージュ山脈とアルザス平原に展開するアメリカ第7軍とフランス第1軍の防衛線を突破・殲滅し、ツァーンアールツト作戦のための通路を開き、アメリカ第3軍の背後を突くことを宣言しました。

作戦の経過

1945年1月1日、ドイツ軍のG軍集団（司令官：ヨハネス・ブラスコヴィッツ）とオーバーライン軍集団（司令官：ハインリヒ・ヒムラー）は、アメリカ第7軍が展開する110kmに及ぶ薄い防衛線に対し、大規模な攻撃を開始しました。アメリカ第7軍は、バルジの戦いのアメリカ軍を補強するために部隊、器材、軍需品を北方に送っていたため、戦力不足に陥っていました。

ドイツ軍がノルトヴィント作戦を開始した同日、ドイツ空軍は航空機1,000機を投入し、連合軍の空軍力を麻痺させることを試みましたが（ボーデンプラッテ作戦）、これは不成功に終わりました。

G軍集団配下の第1軍所属の3個軍団による最初の攻撃は1月9日に行われ、その後も第XXXIX装甲軍団などが作戦に深く関与しました。1月15日までには、第10SS装甲師団、第7降下猟兵師団、第21装甲師団、第25装甲師団など、少なくとも17個師団が作戦に参加しました。また、ストラスブール南方ではフランス軍に対する小規模な攻撃も行われましたが、これは阻止されました。

ドイツ軍の攻撃を受けたアメリカ第VI軍団は、1月13日の時点で3つの局面で戦闘を強いられていました。損害が増加し、戦車、弾薬、補給品が不足する状況下で、ドワイト・D・アイゼンハワーはアメリカ第7軍の崩壊を恐れ、アルデンヌから急遽部隊を派遣して第7軍を補強しました。しかし、その到着は遅れ、1月21日にはアメリカ軍はモーデル川南岸まで撤退を余儀なくされました。1月25日、アメリカ軍の増援が到着し始めると、ドイツ軍の攻撃は停止しました。ストラスブールは守られましたが、コルマールに残されたドイツ軍部隊は依然として脅威でした。

作戦の結果と影響

ノルトヴィント作戦における激しい戦闘で、アメリカ第6軍団は合計14,716名の犠牲者を出しました。アメリカ第7軍全体の損害は不明ですが、戦死3,000名、戦傷9,000名、戦病・負傷17,000名と推定されています。

同時に行われたボーデンプラッテ作戦は、多数の連合軍機を地上で破壊することに成功しましたが、ドイツ空軍も多数の航空機とパイロットを失い、結果的に「効果的なドイツ空軍の最終的破壊に至り、連合軍に絶対的制空権を全体に与えることになった」と評価されています。

1945年2月、アメリカ第21軍団の支援を受けたフランス第1軍はコルマール・ポケットを殲滅し、ライン川西岸のストラスブール南地域にいたドイツ軍を排除しました。

ノルトヴィント作戦は、ドイツ軍が西部戦線で実施した最後の攻勢作戦であり、連合軍に一定の損害を与えたものの、戦略目標を達成することはできませんでした。この作戦の失敗は、ドイツ軍の戦力低下を如実に示すものであり、その後の敗北につながる一因となりました。

参加兵力

G軍集団 (Heeresgruppe G)
第1軍（1. Armee）
第19軍（19. Armee）

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