ノーザン・ウォッチ作戦

ノーザン・ウォッチ作戦：イラク北部上空の監視と保護

ノーザン・ウォッチ作戦は、1997年1月から2003年3月まで実施された、イラク北部上空の飛行禁止空域における監視作戦です。湾岸戦争後のイラク情勢不安定化を受け、クルド人を中心とした少数民族の保護と、イラク軍による攻撃の抑止を目的として、アメリカを主導国に、イギリスやトルコなどの多国籍軍によって展開されました。

作戦の発端と背景

1996年、イラク軍によるクルド人地域への軍事侵攻を受け、アメリカは報復措置としてイラク南部を攻撃しました。この一連の出来事を背景に、親米派クルド人を保護するための軍事介入が必要となりました。それまでのクルド人支援作戦「プロバイド・コンフォート作戦」は、トルコ政府の意向を受け1996年末に終了したため、その代替としてノーザン・ウォッチ作戦が開始されました。トルコ政府は、イランやイラクとの関係改善を望んでおり、作戦の長期化を懸念していました。

作戦の展開と参加国

アメリカ、イギリス、トルコを中心とした多国籍軍は約45機の航空機と1400名以上の兵員を投入しました。アメリカ軍は主力として、戦闘機や爆撃機、早期警戒機、空中給油機などを運用。イギリス軍も戦闘機や哨戒機などを展開し作戦に貢献しました。作戦期間中は、イラク軍との間で小規模な戦闘が断続的に発生しました。1998年には「砂漠の狐作戦」が開始されましたが、ノーザン・ウォッチ作戦部隊はそちらには参加しませんでした。イラク軍は飛行禁止空域を無視し、多国籍軍の航空機に対して攻撃を行うようになり、対空砲火や地対空ミサイルによる攻撃が激化しました。アメリカ軍は、対レーダーミサイルや空対地ミサイルなどを用いてイラク軍の防空施設を攻撃し応戦しました。

作戦の成果と終結

作戦期間中、多国籍軍の航空機は、平均して月間18日間哨戒飛行を行い、イラク軍からの攻撃を受けながらも、航空機の撃墜には至りませんでした。サダム・フセイン政権は、連合軍機の撃墜に対して高額な報奨金を提示していましたが、効果はありませんでした。1999年には、アライド・フォース作戦への戦力移動に伴い、一時的に作戦活動が縮小されましたが、低レベルの紛争状態はイラク侵攻まで続きました。

ノーザン・ウォッチ作戦は、2003年3月、イラク戦争（イラクの自由作戦）開始直前に終結しました。作戦期間中の出撃回数は3万6千回以上に及び、作戦に従事した兵員は4万人以上に上りました。作戦の終了後、アメリカ空軍第55戦闘飛行隊所属のF-16戦闘機が、トルコ・インジルリク空軍基地から母国へと帰還し、作戦の終結を象徴しました。

作戦の意義

ノーザン・ウォッチ作戦は、イラク北部における飛行禁止空域の維持、クルド人保護という明確な目的の下で実施されました。作戦期間中、イラク軍との武力衝突は発生しましたが、多国籍軍の航空優勢により、イラク軍の侵攻は阻止されました。この作戦は、湾岸戦争後のイラク情勢における、国際社会の介入の在り方を示す事例として、軍事史に記録されています。

関連事項

サザン・ウォッチ作戦
湾岸戦争
* 飛行禁止空域 (イラク)

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