ノーナ

ローマ神話に登場する運命の三女神、パルカエ。その中に、妊娠を司る女神としてノーナ（Nona）がいます。ノナと呼ばれることもありますが、これは日本語の長母音を省略した表記です。

ノーナは、ギリシャ[神話]]で運命の三女神モイラの一柱であるクロートー]と同一視されています。[[クロートーは、運命の糸を紡ぐ女神として知られており、「現在」を司るとされています。この同一視は、ノーナも同様に現在の出来事、特に妊娠と出産という人生における重要な出来事を司る存在であることを示唆しています。

ノーナという名前には、「9」という意味が込められています。古代ローマにおいて、妊娠期間は9ヶ月と認識されていたため、妊娠9ヶ月を迎えた女性は、無事に健康な子どもを産むことができるよう、ノーナに祈りを捧げ、お参りをしたとされています。これは、ノーナが女性の妊娠と出産を保護する神聖な存在として信仰されていたことを示しています。

ノーナは、パルカエの他のメンバーであるデキマ（Decima、10を意味する）とモルタ（Morta、死を意味する）と共に、運命の糸を紡ぐ役割を担っています。デキマは、おそらく出産後、もしくは人生における次の段階を司る女神として、そしてモルタは人生の終わり、すなわち死を司る女神として、それぞれが人間の運命の重要な局面を象徴していると考えられます。

このように、ノーナは単なる妊娠を司る女神というだけでなく、運命の糸を紡ぎ、人生の重要な転換期を見守る、より大きな役割を担う存在として、古代ローマの人々に信仰され、畏敬の念を抱かれていました。彼女の存在は、古代ローマ人の人生観や死生観、そして女性と出産に対する考え方を理解する上で重要な手がかりとなります。

パルカエとモイラは、それぞれローマ神話とギリシャ神話における運命の女神たちですが、その役割や象徴する意味において多くの共通点が見られます。特に、ノーナとクロートーの同一視は、両文化における運命観や信仰の共通性を示しており、古代地中海世界における神話の交流や伝播を考える上で重要な視点となります。ノーナに関する研究は、古代ローマ社会における宗教や信仰、女性の社会的地位など、多角的な視点からの考察を可能にするでしょう。さらに、現代においても、妊娠や出産を控えた女性にとって、ノーナは安産を祈念する象徴的な存在として捉えることができるかもしれません。

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