ノーブレーキピスト

ノーブレーキピストの概要と規制

ノーブレーキピスト（no brake piste）は、ブレーキが装着されていない状態の固定ギア自転車であり、主に公道で使われるトラックレーサーの一種です。日本では、ブレーキの有無に関係なくこれらは一般にピストバイクと呼ばれることがありますが、トラックレーサー本来の定義にはブレーキなしのものが含まれます。要するに、ピストは元々競技専用の自転車として設計されており、公道を走ることは想定されていません。

ピストという言葉はフランス語で自転車競技のトラックを意味し、競技用の自転車は通常ブレーキを搭載しないのが基本です。固定ギアの特徴として、ペダルと車輪が直接結びついているため、逆にペダルを回すことで自転車をバックさせることが可能です。このため、制動にはペダルを逆に踏むスキッド技術が使われます。しかし、この技術は急停止には向いておらず、むしろ速度の調整に留まります。したがって、緊急時の制動は非常に困難であり、特にビギナーにとっては危険が高いです。ハンドルバーのデザインには、ブルホーンバーやドロップハンドルがよく見られます。

法律と規制

ノーブレーキピストの利用は、世界各国で法律により規制されています。特に日本では、車両に必須なブレーキ装置を欠いた自転車は道路交通法に違反します。具体的には、道路交通法施行規則において、自転車には前後車輪を制動する機能が求められています。2013年には、後輪ブレーキがないBMXを公道で乗り回していた人物が逮捕される事件があり、これはノーブレーキピストの危険性を如実に示しています。

各国の状況

アメリカでは、1970年代から1980年代にかけて特にニューヨークでのメッセンジャー業界からノーブレーキピストの存在が広まりました。彼らは経済的な制約からシンプルでメンテナンスの少ないトラックレーサーを好んで使い、そこからストリートカルチャーと深く結びついていきました。ドキュメンタリー映画『PEDAL』が発表された2001年には徐々に注目を集めるようになります。

日本でも、2000年代半ばからストリートカルチャーとして受け入れられるようになりました。特に、メッセンジャー経験のあるデザイナーやDJたちが主導し、ファッションとしても取り入れられていきました。広告業界でもノーブレーキピストが取り上げられ、2007年にはナイキ社が非公式なブレーキの存在を肯定するような広告を制作したものの、違法行為を助長するとの批判が巻き起こり、撤去される事態となりました。

また、東京都は2013年に自転車安全条例を施行し、直接的にノーブレーキピストの販売を禁じる条項を設けました。これにより、以前まで放置されていたノーブレーキピストの販売が法的に制限され、その販売業者は罰則の対象となります。

このように、ノーブレーキピストはそのユニークな特徴を持つ一方で、法律上のリスクや安全性の問題から使用に制限が設けられているこの文化を、理解することが求められています。

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