ノーマルポジション

ノーマルポジションの磁気テープ：グレード別の詳細解説

ノーマルポジションとは、磁気テープにおけるポジション表示の一つで、IEC TYPE1として規格化されています。ここでは特にコンパクトカセットのノーマルポジションに焦点を当て、その多様なグレード展開について詳細に解説します。

テープグレードの種類

ノーマルポジションの磁気テープには、以下の様な様々なグレードが存在します。これらのグレードは、音質や録音性能に影響を与え、用途に応じて使い分けられていました。

STD (スタンダード)
主にオープンリール用のSTDテープを転用したグレードで、ノーマルポジションの中では最もベーシックな位置づけです。
初期のコンパクトカセットにも使用されましたが、ヒスノイズの多さから会話録音用途に限定されていました。
初期のフィリップスカセットや、TDKのシンクロカセット、マクセルのC、ソニーのマガジンテープなどがこのグレードにあたります。現在では、HIDISCやダイソーの一部の製品で確認できます。

LN (ローノイズ)
STDテープのS/N比を改善し、音楽録音にも耐えうるように汎用性を高めたグレードです。
1968年頃からSTDテープの代替として普及し、モノラルラジカセやテープレコーダーによく使用されました。
TDKのF、LN、D、ソニーのC、マクセルのULなどが代表的ですが、1980年代中期までに製造を終えました。

LLH (ロークラス・ローノイズ・ハイアウトプット)
LNテープの磁性体改良版で、中高域のMOLやS/N比を向上させたグレードです。
LNとLHの中間に位置づけられ、1979年に日本コロムビアから発売されたDX1が初出です。
現在ではノーマルポジションの主流となっており、マクセルのURやHIDISCの製品などがこのグレードに相当します。
過去には、ソニーのHF、TDKのAE、富士フイルムのA1などが存在しました。

LH (ローノイズ・ハイアウトプット)
LLHよりさらに高域性能を高めたグレードで、γ-ヘマタイト酸化鉄系磁性体の密度を上げたり、コバルトドープ酸化鉄系磁性体を混合するなどして実現しています。
実質的にLNとLHに大別され、LHの中でさらに低級、標準、高級の3タイプに分かれます。
TDKのSDが初出で、ソニーのHi-Fi、TDKのAD、マクセルのUDなどが代表的な製品です。
高級ノーマルテープは、中低域のMOL特性がメタルテープに匹敵するレベルに達し、録音レベルを高く入力することが推奨されました。

SLH (スーパーローノイズ・ハイアウトプット)
ノーマルポジションの中では最上位に位置するグレードで、主にオープンリールで使用されました。
コンパクトカセットでは、前述のLLHが後発のグレードとして存在します。マクセルのUD-XLが代表的な製品です。

各グレードの特徴と用途

各グレードの磁気テープは、それぞれ異なる特徴を持っていました。STDは初期のグレードで、LNは普及グレード、LLHは後発の標準グレード、LHは高音質グレード、SLHは最上位グレードという位置づけです。

グレード	特徴	主な用途
:-	:------------	:-------------
STD	最もベーシックなグレード、ヒスノイズが多い	会話録音
LN	S/N比を改善し、汎用性を高めたグレード	会議録音、音楽録音
LLH	LNテープを改良し、中高域のMOLやS/N比を向上させたグレード	音楽録音
LH	高域性能に優れ、磁性体の密度を上げたり、コバルトドープ酸化鉄を混合したグレード	高音質音楽録音
SLH	ノーマルポジションでは最高のグレード	オープンリールでの高音質録音

脚注・出典

加銅鉄平, 基礎オーディオ技術, オーム社, 1989, ISBN 4274032485
日立マクセル, こんにちはカセットテープ改訂版, 1985
音楽之友社, 月刊Stereo 2019年11月号「特集 不滅のカセットテープ・リバイバル」 19頁 - 55頁

関連項目

* コンパクトカセット

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