ハイシバ

ハイシバ（Lepturus repens）

ハイシバはイネ科に属する多年生の草本植物で、主に暖地の海岸環境で自生しています。特に南九州や琉球列島に広く分布し、小笠原諸島にも見られることから、特に日本の南部において注目されています。本種の特徴としては、長く伸びた匍匐枝があり、根を下ろして周囲に広がる植物として知られています。

特徴

ハイシバの茎は、直立または斜めに立ち、高さはおおよそ15～40cmにまで成長します。匍匐枝は堅く長く、先端から新しい芽を出すことができ、このプロセスによって繁殖していきます。また、茎の基部近くの節からも発根することがあります。

葉は、長さが5～12cm、幅が3～5mmと比較的狭く、無毛であるか、もしくは葉鞘の口付近に僅かな毛が見られます。葉舌は高さ0.5～1mmで、細かく裂けた縁には短い毛が並んでいます。このような特性により、葉の形状や質感は特徴的です。

花序は茎の先端部分に単独で現れ、その長さは5～15cmに達します。花序の軸は、節ごとにくの字に曲がっており、篩のように小穂が窪みに挟まって存在しています。小穂には1つずつ互生に配置されており、先端の小穂には2枚の包頴が付いている一方、側生の小穂には包頴が1枚のものもあります。特に第2包頴は狭披針形で、長さは約8～14mm、脈が多く、質感は厚く硬いです。

分布と生育環境

ハイシバは、日本国内では九州南部を起点に琉球列島や小笠原諸島にも分布しています。国外では旧世界の熱帯地域に広く見られるため、海岸近くの生息環境に適応しています。特に砂浜に生育することが多いですが、岩場でも観察されることがあります。タイプ産地はオーストラリアの太平洋岸であるとされます。

分類と類似種

ハイシバ属には、世界で8種類程度存在していますが、日本国内には本種が唯一です。識別ポイントとしては、海岸性、匍匐枝の存在、及び小穂の固さに関する特徴が挙げられます。他のイネ科植物においても花軸が棒状で小穂がその側面に存在するものがありますが、ハイシバは特有の特徴によって容易に識別できます。

同じように見えるハリノホ（Hainardia cylindrica）とは近縁関係にありますが、1年生であり、匍匐枝を持たないことから見分けることが可能です。

保護の状況

環境省のレッドデータブックによれば、ハイシバは特に保護のための指定はされていませんが、鹿児島県では準絶滅危惧に指定されており、北限の地として知られています。このように、九州以南の地域では比較的一般的に見られる植物と見なされています。

参考文献

• - 大橋広好他編、『改訂新版 日本の野生植物 2 イネ科～イラクサ科』、(2016)、平凡社
• - 長田武正、『日本イネ科植物図譜（増補版）』、(1993)、（平凡社）
• - 中西弘樹、『日本の海岸植物図鑑』、(2018)、トンボ出版
• - 茨木靖他、『南のイネ科 ハンドブック』、(2020)、文一総合出版
• - R. Novack & J. F. Veldkamp, 2002. Notes on Lepturus (Gramineae) in Malesia. BLUMEA 47 :pp.385-389.

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