ハイダイナミックレンジイメージ

ハイダイナミックレンジイメージ（HDRイメージ）

ハイダイナミックレンジイメージ（High Dynamic Range Image、略称HDR画像）は、高い輝度の範囲を持つデジタル画像の一種です。この画像形式は、実際の明るさを忠実に再現することができるため、照明のシミュレーション、コンピュータグラフィックス、さらにはコンピュータゲームなど、様々な分野で活用されています。HDR画像は、特にリアルなビジュアル体験を提供し、より広い色域と明暗を表現します。

HDR画像の技術

HDR画像では、Half Float（FP16）や、各色12ビットのPQカーブ（SMPTE ST 2084）などの技術が使用されています。これらの技術により、ディザリング技術を用いることなくカラーバンディングを防ぐことができます。これにより、階調の豊かさを失うことなく、画像の質が向上します。

歴史

ハイダイナミックレンジ画像の発展は、まず非ハイダイナミックレンジ画像の技術から始まりました。スタンダードダイナミックレンジ（SDR）画像は、従来のブラウン管ディスプレイで表示できるように設計されてきました。その結果、sRGBやRec. 709といった色空間が主に使用されていました。1998年にAdobeがAdobe RGB色空間をPhotoshopに追加し、印刷業界でも広まりました。

宣伝映像や3DCG制作では、現実の明るさを正確に表現するため、照明シミュレーションソフトウェア「Radiance」が開発され、その中でRadiance HDR形式が誕生しました。この形式は、浮動小数点数を元にした情報をRGBE方式で扱うため、精度の限界があります。

逆に、TIFF形式では32bit浮動小数点数に対応していましたが、ファイルサイズが大きくなる欠点がありました。これを受けてインダストリアル・ライト&マジック社がOpenEXRという新たなHDR画像形式を開発し、1999年に公開しました。この形式は、16bit浮動小数点数を扱え、よりコンパクトなデータ管理を実現します。

ゲーム産業でもHDRレンダリングが普及し、テクスチャマッピングではHDRテクスチャ圧縮方式が導入されました。特にBC6HやBPTC FLOATなどの技術が使われ、これにより多彩なテクスチャを生み出すことに成功しています。

また、映画業界においてもHDR技術が登場し、Cineon形式やDPX形式のようなミディアムダイナミックレンジ（MDR）形式が標準化されています。これらは濃淡の幅が広く、一般的なHDR画像とは異なる特性を持ちます。

近年、2010年代に入ると、一般消費者向けのHDRディスプレイが普及し、スマートフォンにもHDR機能が組み込まれるようになりました。新たな画像形式であるHEIFやAVIF、JPEG XLが登場し、これらは現実的な色合いと高い明度を持つ画像を表示するために適しています。

主なHDR画像形式

• - *Radiance HDR形式（.hdr）: 1985年に開発され、RGB毎に8ビットの仮数部と8ビットの指数部を用いた32ビットの浮動小数点表現です。
• - OpenEXR（.exr）: 16ビットの浮動小数点数表現をサポートし、複数の圧縮方式を持つインダストリアル・ライト&マジック社の開発した形式です。
• - JPEG XT: JPEG画像の拡張仕様で、HDR浮動小数点画像に対応しています。
• - Floating Point TIFF*: TIFF形式でも浮動小数点数のHDR画像データを取り扱うことが可能になります。

これらの技術的進歩により、ハイダイナミックレンジイメージは日に日に進化を続け、デジタル映像の表現力を高めています。

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