ハイバネーション

ハイバネーションについて

ハイバネーション（英: hibernation）は、パーソナルコンピュータ（PC）のオペレーティングシステム（OS）が提供する特別な停止モードの一つです。この機能により、コンピュータの電源を完全に切断する前に、メインメモリ内のデータを不揮発性メモリであるストレージデバイスに保存します。これによって、電源を切った後でも作業の状態を保持し、後で再起動した際には中断したところから作業を再開できるのです。

ハイバネーションの概念

ハイバネーションを使うことにより、実行中のアプリケーションソフトウェアやそのデータを終了させずにコンピュータをオフにすることが可能です。すべてのアプリケーションの状態や作業状況は、ストレージに自動的に復元されるため、初心者でも容易に利用できます。特にバッテリーを使用することが多いノートPCでは、電力消費を抑えるためにハイバネーションが普及しています。たとえば、バッテリー残量が少なくなると、自動的にハイバネーションモードに切り替える設定も可能です。

この技術は1992年にアメリカのコンパック・コンピュータ社によって初めて実装され、同社はこの技術に特許も取得しています。また、ハイバネーションは「スリーピングモードS4」として、ACPI（Advanced Configuration and Power Interface）仕様の一部としても定義されています。

スリープモードとの違い

ハイバネーションとスリープモードの主な違いは、電力の使用方法です。スリープモードでは、メインメモリの内容を維持するために少量の電力が必要です。このため、モバイル運用においては不利となることがありますが、ハイバネーションでは完全に電源を切るため、バッテリー消費を回避できます。

さらに、デスクトップPCの場合でも、ハイバネーション中に不意に電源が切れても作業内容が保存されているため、安心して作業を続けることができるのです。ただし、メインメモリの内容をストレージに書き込む作業が必要なため、ハイバネーションに移行する際には時間がかかることがあります。

シャットダウンとの比較

シャットダウンの場合、OSはまず実行中のアプリケーションを全て終了させる必要があります。特にWindowsでは、セッションを終了するようにアプリケーションにメッセージを送信し、ユーザーにはいかなる作業を保存する必要があるか確認されることがあります。これに対して、ハイバネーションではこのようなプロセスを経ずにすぐに停止状態に移行し、再起動時に停電前の状態をそのまま再現できます。

各OSにおけるハイバネーション

Microsoft Windows

Windows 95や98の初期では、ハイバネーション機能はサポートされておらず、APM（Advanced Power Management）機能に依存していました。Windows 2000以降では、OSレベルでのハイバネーション「休止状態」が導入され、メモリの内容は圧縮されて「hiberfil.sys」という隠しファイルに保存されます。Vista以降は「ハイブリッドスリープ」が追加され、スリープ中のデータ喪失のリスクも軽減されています。

macOS

macOSではハイバネーションに相当する機能が「セーフ・スリープ」として提供されています。特に、2005年以降のモデルでは作業状態をHDDに保存し、電源が切れた場合でもスムーズに復元できます。この機能があるため、アップルは特にハイバネーション機能に関する選択肢を別途設けていません。

Linux

Linuxにおいては、2.6シリーズのカーネルでswsusp（Software Suspend）という形式でハイバネーションが実装されています。加えて、TuxOnIceやuswsuspという別の方法でも提供されています。

結論

ハイバネーションは、現代のコンピュータ利用において重要な功能の一つで、電力の節約と作業効率を向上させる役割を果たしています。特にバッテリー駆動のPCや不安定な電源環境での利用においては、そのメリットは計り知れません。この機能をうまく活用することで、効率的で快適なコンピュータライフを送ることができるでしょう。

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