ハイパーバイザ

ハイパーバイザとは

ハイパーバイザは、コンピュータの仮想化技術の中核をなすソフトウェアです。仮想マシン（バーチャルマシン）を作成し、その上で複数のオペレーティングシステム（OS）を同時に実行することを可能にします。別名、仮想化モニタや仮想化オペレーティングシステムとも呼ばれます。

「ハイパー」という言葉は、OSをさらに管理する上位の層という意味合いで使われています。これは、OSが「スーパーバイザ」と呼ばれることがあることに由来します。

ハイパーバイザの種類

ハイパーバイザには大きく分けて2つのタイプがあります。

Type 1 (ネイティブ/ベアメタル) ハイパーバイザ

• - ハードウェア上で直接動作するハイパーバイザです。OS（ゲストOS）は、このハイパーバイザ上で動作します。
• - 狭義には、こちらのみが「ハイパーバイザ」と呼ばれます。
• - 例：

- IBM z/VM
- VMware ESX, ESXi, vSphere
- Xen
- Microsoft Hyper-V
- Linux Kernel-based Virtual Machine (KVM)
- IBM LPAR（ファームウェアに組み込まれたタイプ）

Type 2 (ホスト) ハイパーバイザ

• - ホストOSと呼ばれる別のOSの上で動作するハイパーバイザです。ゲストOSは、このハイパーバイザ上で動作します。
• - 例：

- VMware Server, VMware Workstation Pro, VMware Fusion Pro for Mac
- Microsoft Virtual PC, Microsoft Virtual Server
- Oracle VirtualBox
- Parallels Workstation, Parallels Desktop
- QEMU
- Oracle Solaris Kernel Zone

完全仮想化と準仮想化

• - 完全仮想化: ゲストOSを修正せずにそのまま動作させることができる方式です。ハードウェアを完全にエミュレートします。
• - 準仮想化: ゲストOSに修正を加える必要がある方式です。性能向上のために用いられます。

ハイパーバイザの歴史

「ハイパーバイザ」という用語は、IBMのCP-370が起源です。1972年にVM/370としてリリースされました。ハイパーバイザコール（hypercall）は、準仮想化インターフェースで参照され、ゲストOSが制御プログラムにサービスを要求する際に使用されます。

メインフレームにおけるハイパーバイザ

ハイパーバイザはメインフレームで最初に実装されました。1967年にIBMがCP-40を開発し、これが現在のz/VMへと繋がっています。メインフレームでは、z/OSやz/VSE、LinuxなどをゲストOSとして利用し、サーバー統合などに活用されています。

サーバにおけるハイパーバイザ

近年、サーバ分野でも仮想化技術が再び注目されています。

• - ハードウェア性能の向上
• - サーバ統合によるコスト削減と管理の簡素化
• - 大規模なマルチプロセッサやクラスタサーバの管理
• - セキュリティや信頼性の向上
• - 異なるハードウェアやOS環境でのアプリケーション実行の要望

これにより、主要なUNIXベンダーが仮想化ハードウェアを販売するようになりました。また、論理パーティショニング（LPAR）のような技術もサーバに導入されています。

x86システムにおけるハイパーバイザ

x86アーキテクチャのPCでも、ハイパーバイザの開発が進んでいます。初期の例としてはVMwareがあります。x86アーキテクチャは仮想化が難しいとされていましたが、Intel VTやAMD-Vなどの仮想化支援機構の登場により、完全仮想化の実現とパフォーマンス向上が可能になりました。

組み込みシステムにおけるハイパーバイザ

組み込みシステムでも、ハイパーバイザが利用されるようになってきました。これは、リアルタイムOS（RTOS）と高レベルOSを同時に利用したいという要望に応えるためです。組み込みシステムでは、リソースが限られているため、省メモリかつ低消費電力なハイパーバイザが求められます。また、準仮想化が選択されることが多いです。

まとめ

ハイパーバイザは、仮想化技術の中核を担う重要なソフトウェアです。Type 1とType 2の2種類があり、それぞれの特徴や用途に応じて使い分けられます。メインフレームからサーバ、PC、そして組み込みシステムまで、様々な分野で活用されており、その重要性はますます高まっています。

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