LPAR

LPAR（論理区画）とは

LPAR（Logical PARtitioning：論理分割、Logical PARtition：論理区画）は、コンピュータの仮想化技術の一つで、1台の物理的なコンピュータを、あたかも複数の独立したコンピュータのように利用できるようにする技術です。この技術によって作成された仮想的な区画そのものもLPARと呼ばれます。LPARは、主にファームウェアであるスーパーバイザの機能によって実現されます。

LPARの概要

LPARの最大の特長は、1台のコンピュータ上で複数のオペレーティングシステム（OS）を同時に稼働できる点です。これにより、異なるOS環境を必要とするアプリケーションを同時に実行したり、システムのリソースを効率的に利用したりすることが可能になります。

LPARは、他の仮想化技術であるPPAR（物理分割、物理区画）と比較すると、柔軟性に優れています。PPARがハードウェアの物理的な構成に依存して分割されるのに対し、LPARは1つの物理的な構成でも利用でき、CPU、メモリ、I/Oなどのリソースを細かく、かつ柔軟に配分・変更することができます。また、仮想化OSと比較すると、LPARは柔軟性では劣るものの、信頼性が高く、システムの負荷（オーバーヘッド）が少ないという利点があります。これらの技術は、組み合わせて使用されることも多く、システム環境に合わせて最適な仮想化環境を構築できます。

LPARの歴史

LPARの歴史は、1987年にIBMのメインフレーム向けに登場したPR/SMに遡ります。

1987年: IBMメインフレーム用のLPARであるPR/SMが登場
2001年: IBM pSeries用のLPARが登場（POWER4プロセッサ搭載）
2002年: Dynamic Logical Partitioning (D-LPAR)が登場 (POWER4およびAIX5.2)
2004年: Micro-Partitioningが登場 (POWER5)
2007年: Live Partition Mobilityが登場 (POWER6)


これらの技術革新により、LPARはより柔軟で効率的な仮想化環境を実現できるようになりました。

メインフレームでのLPAR

メインフレームにおけるLPARは、IBMのPR/SMによって実現されています。各LPARでは、z/OS、z/VM、z/VSE、Linux on System zなど、様々なOSを稼働させることができます。

Power SystemsでのLPAR

IBMのUNIXサーバであるSystem p（および日立製作所のEP8000）、ミッドレンジのSystem i、そしてこれらを統合したPower SystemsにもLPARが搭載されています。Power Systemsでは、AIX、IBM i（旧称i5/OS、OS/400）、Linux on PowerなどのOSが各LPARで稼働可能です（ただし、EP8000ではAIXのみ）。

Power SystemsにおけるLPARは、PowerVMという仮想化機能の一部として位置づけられています。エディションによって、1台のサーバあたり3つ、CPUコアあたり10個などのLPARを作成できます。

Power Systemsでは、以下のLPARの機能が利用可能です。

Dynamic LPAR (D-LPAR): OSやアプリケーションを停止することなく、動的にリソース割り当てを変更できます（POWER4から導入）。
Micro-Partitioning: CPUリソースを1/100単位（最低1/10）で割り当てることができます（POWER5から導入）。
Live Partition Mobility: 稼働中のLPARを物理システム間で移動させることができます（POWER6から導入）。

これらの機能に加えて、PowerHAなどのクラスタリングソフトウェアと連携することで、LPARが移動した先でリソース割り当てを自動的に増やすなどの高度な機能も利用可能です。

LPAR関連技術

LPARの理解を深めるために、以下の関連技術についても理解しておくと良いでしょう。

仮想化: コンピュータのリソースを抽象化し、複数の環境を同時に利用可能にする技術の総称。
ハイパーバイザ: 仮想マシンを管理するソフトウェア。
PowerVM: IBM Power Systemsの仮想化機能。
Dynamic Logical Partitioning: 動的にリソース割り当てを変更する機能。
Micro-Partitioning: CPUリソースを細かく分割する機能。
Live Partition Mobility: 稼働中のLPARを移動させる機能。

外部リンク

IBM - PowerVM
IBM - Advanced POWER Virtualizationの歴史
* IBM RedBook - LPAR Simplification Tools Handbook


LPARは、現代のエンタープライズシステムにおいて重要な役割を果たしている仮想化技術です。その柔軟性、効率性、信頼性から、様々なシステムで広く活用されています。

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