ハイルブロン同盟

ハイルブロン同盟：三十年戦争下のプロテスタント同盟

ハイルブロン同盟は、三十年戦争中の1633年5月18日に、神聖ローマ帝国の都市ハイルブロンで、スウェーデンとプロテスタント諸侯によって結ばれた軍事同盟です。この同盟は、スウェーデン国王グスタフ2世アドルフの死という大きな転換点を背景に成立しました。

グスタフ2世アドルフの死とその影響

1632年、グスタフ2世アドルフはリュッツェンの戦いで戦死しました。彼の死は、スウェーデンの勢力に大きな打撃を与えました。グスタフ2世アドルフのカリスマ性と軍事的な才能によって支えられていたスウェーデンの勢威は、彼の死後急速に衰退しました。ドイツでの戦争継続は困難となり、撤退も選択肢として浮上しましたが、それは敗北を意味していました。スウェーデン国内を納得させるためには、参戦に見合うだけの成果が必要であり、プロテスタント諸侯との同盟は不可欠でした。

プロテスタント諸侯の思惑

一方、ドイツのプロテスタント諸侯もグスタフ2世アドルフの死に危機感を抱いていました。外国勢力の支援がなくなれば、皇帝フェルディナント2世による弾圧が始まる可能性がありました。特に小貴族クラスの諸侯にとって、皇帝軍の圧力は生存を脅かすものでした。ボヘミアの反乱貴族の運命は、彼らにとって明日の姿を映し出す鏡だったのです。

同盟の成立とフランスの介入

スウェーデンとプロテスタント諸侯の思惑が一致し、「ドイツの自由とスウェーデンへの感謝」をスローガンに、ハイルブロン同盟が結成されました。この同盟は、スウェーデンの宰相オクセンシェルナの外交手腕によって実現しました。しかし、フランスとザクセン公は同盟の成立に反発しました。フランス宰相リシュリューは、ハイルブロンにフーキエールを派遣し、オクセンシェルナを脅迫し、盟主の交代を強要しました。これは、フランスとスウェーデンが3年前に締結したベールヴァルデ条約に違反するものでした。オクセンシェルナはフランスの支援停止を恐れ、フランスの影響下で、グスタフ2世アドルフの近衛騎兵連隊の指揮官だった傭兵隊長ベルンハルト・フォン・ザクセン＝ヴァイマルがハイルブロン同盟軍の指揮を執ることになりました。オクセンシェルナが総司令官に据えたかったグスタフ・ホルンは、スウェーデン軍の新司令官となりました。

同盟の弱体化とネルトリンゲンの戦い

野心的なベルンハルトと慎重なホルンは、性格が正反対であり、互いに反発しました。この対立は、ネルトリンゲンの戦いにおけるスウェーデン・ハイルブロン同盟軍の大敗の一因となりました。ハイルブロン同盟は、成立当初から内包していた危機が表面化したのです。ベルンハルトは後に神聖ローマ皇帝フェルディナント2世と和解し、プラハ条約に署名したり、フランス軍の指揮官となるなど、スウェーデンとプロテスタント諸侯を翻弄しました。

ハイルブロン同盟は、三十年戦争におけるプロテスタント側の結束を示すものでしたが、その内部には多くの問題を抱えていました。フランスの介入、指揮官の対立、そしてベルンハルトの裏切りなど、様々な要因が重なり、同盟は徐々に弱体化していきました。

参考文献
* 菊池良生『戦うハプスブルク家 近代の序章としての三十年戦争』（講談社現代新書、1995年） ISBN 4-06-149282-9

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